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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-14

 正和の両親はひどく心配した。一緒に出かけようとも、笑いもしないし、子供らしくはしゃぐ様子もない。その様子を見て、両親は悲しくもなってきた。

 しかし、彼にも子供らしい一面があった。小学校に上がって少し経った頃、冷蔵庫の前にいる正和を母親は見つける。何か飲みたいものでもあるのかと母親が尋ねると、正和は「これはどこに入れればいいの?」と返した。彼が手に持っていたものは、父親からもらった十字架をモチーフにしたネックレスだった。それを見て、母親はにっこりと笑うと「これは冷蔵庫に入れるものじゃないのよ」と優しく諭す。それに首を傾げ「でも、冷蔵庫は大切なものを入れるものでしょ?」と正和は聞き返す。その言葉を聞いて、母親はまたにっこりと笑うと「そうね。でもそれは正和が大切に持ってないといけないの」と言った。納得はしてないようだが、正和は小さく頷くと自分の部屋に戻った。

 その夜、母親はそのことを父親に教えた。父親は、本当に嬉しそうに笑った。今まで子供らしい一面を見せたことのない正和が、そのような行動をとったのが、父親にとってはたまらなく嬉しかった。

 そんな正和に対し、五歳年上の姉である美鈴(みれい)は、感情表現豊かだった。学業での成績は正和と比べると劣るが、充分だった。彼女の真価は、優れた発想力と表現力によるものだったからだ。

 両親ともよく話し、正和とも何ら変わらず接した。友達も多く、学級委員にもよく選抜された。唯一、正和からも慕われていた人物でもあった。

 正和にとって、両親よりも美鈴のほうが優れていた。こんな性格の自分とよく話し、よく笑いかけてくれた。それが正和にはたまらなく嬉しかった。両親もよく笑いかけてくれたが、それとは違う温かみがあった。

 そうして彼は姉を愛した。美しく、強く、優しい姉を。それはとても純粋な、それ故に儚い愛だった。











 懐かしい夢だった。自分がまだ子供で、とても愚かだった頃の夢を見た。

 両親の悲しそうな顔や、作られた笑顔を向けられた頃。同年代に拒絶された頃。姉に惹かれていた頃。

 体が痛い。特に頭が痛い。どうしてだ。俺は掃除機をかけようとして……。

 そうだ、目眩がして倒れたんだ。

 周りを見渡すと、それは見慣れた寝室だ。意識を失いそうになったから、寝室に戻ってきたんだっけ。いや、違うな。そんな余計な行動はできなかったはずだ。

「なにが……どうなっているんだ」

 冷静に考えろ。何故、俺は寝室にいるんだ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。

「まだ具合が悪いのか?」

 声の聞こえた方を向く。そこには腕を組んで、こちらを見ている姉がいた。

「姉さん」

 小さくため息をつくと、姉はリビングに戻った。追いかけようとベッドから下りる。しかし、足が体を支えられずに、ばたんと無様に床に倒れた。


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