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ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

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『ewig〜願い〜by絢芽』-6

「あ、当たっちゃった?この前のような明るさっていうか、オーラがないからさ。」
この人は、今まで多くの人と関わり、生きてきたからこそ、人の少しの変化でも気づくことができるのかなと思った。
「沈んでいるけど、俺の入る隙はないんだよなぁ……そんなに嵩雅のこと好きになっちゃった?」
私は、鈴原様の方に向けていた目を掃除していた床のほうへ向けた。
好き……そんな軽い感情なんかではない。
好きよりももっと、深い感じ。
愛おしい。愛くるしい。
私は……嵩雅様を……
「……好きとかではないです。そんな感情ではありません。」
「え?本当に?俺の勘外れたことはないんだけどなぁ……。」
気づいたら口に出していた。
もう止められない。
止まらないところまで来てしまったんだ。
私の密かなこの想いは。
「外れたわけじゃないです。ただ、好きという軽いものではないだけなんです。」
「え?じゃあ……?」
鈴原様は意味ありげな返事をした。
私の気持ちを知っていてこういう風に返事をしたのか、本当に気づいてなくてこの返事なのかわからない。
わたしは、それにかまっている余裕はなかった。
言葉も続けては出てこない。
言ってしまったら爆発してしまいそうだった。
会いに行ってしまいそうだった。
家主にただの女中が恋愛感情を抱いてしまうなどご法度。
そもそも、女中が家主に恋愛感情を抱いたところで結ばれるわけがない。
叶うわけがない……感情なのだ。
私の悲壮な想いを察したのか、鈴原様は私の頭をポンポンと叩いた。
「あまり思いつめるなよ。意外と世の中簡単に出来ているんだぜ?」
私はうっすらと目に涙を浮かべて鈴原様に目を向けた。
鈴原様は優しいお顔で私を見ていた。
「嵩雅がお前に心を開いているのは事実だし、恐らく嵩雅もお前に同じような想い抱いてるよ。」
私は目を見開いた。
まさか、そんなことあるわけがない。
わたしにあの人が同じような想いを抱いているわけがない。
「ま、信じるかどうかはお前次第だけど……な。」
そう言い残すと鈴原様は去っていった。
顔が熱い。
きっと真っ赤だ。
まさか、そんな――。
嵩雅様が私と同じ気持なんて……
――あるわけがない――
そうでしょ?神様……?




その夜。
一通りの仕事を終えた私は、自分の寝床へと向かっていた。
その途中で、庭で佇む嵩雅さまを見つけた。
一気に体が熱くなる。
お昼に鈴原様と交わした言葉が頭をよぎる。

――恐らく嵩雅もお前に同じような想い抱いてるよ――

そんなことあるわけがない。
だけど、嵩雅様の姿を見ただけでこんなにも苦しい。
できることなら、走りよって抱きしめたい。
抱きしめられたい。
その気持ちを抑え、ゆっくりゆっくりと嵩雅様に近づいた。
「今夜は満月か……」
嵩雅様は少し悲しげな表情で池を見つめていた。
抱きしめたい――。
そんな気にさせるような表情だった。
嵩雅様は池に手を伸ばした。
まだ近づく私には気づいていない。


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