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ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

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『ewig〜願い〜by絢芽』-5

「初めて笑った顔、見ました……。」
私は微笑みながら言った。
本当に嬉しかった。
嵩雅様はこんなにも楽しそうに笑える方なのだと知れたこと。
嵩雅様が私に心を開いて下さったのだと感じられたこと。
「心から笑ったの初めてかもな。絢芽、内緒な。」
照れながら嵩雅様が言った。
楽しそうな笑顔を残したままで。
その表情は可愛らしくて、愛おしくなった。
また、嵩雅様の言葉により一層嬉しくなった。
嵩雅様が初めて笑顔を見せられたのが、私ということに、嬉しさと誇らしさを感じた。
「はい、心に秘めておきます。」
私は微笑みながら、人差し指を口元に当てて答えた。


嵩雅様の新しい面をたくさん見られて嬉しかった。
嵩雅様が心を開いてくれて嬉しかった。
そして、その心を開いた初めての人が私で嬉しかった。
嵩雅様のいろいろな表情を見ることができ、ますます嵩雅様を好きだと感じた。
ますます愛おしくなった。
すると、嵩雅が微笑みながら私を見ているのに気がついた。
その微笑には、愛おしさなどが混ざっているように見え、もしかしたら嵩雅様も……?
と思えて、恥ずかしくなっていた。



「絢芽ちゃん、今日はあたしに嵩雅様のお世話させてくれない??」
「また……ですか?」
最近、先輩女中たちがこぞって私に嵩雅様の世話を変わって欲しいと頼みに来る。
理由はただ一つ――。
嵩雅様が変わった。
あの、私に笑顔を見せたあの日以来、嵩雅様の雰囲気が変わったのだ。
今までは、何処か他人を拒絶しているような、冷たい感じを纏っていたのが、今は冷たくあしらっていても温かさを感じるようになった。
ただ、私以外には笑わないのだけれども――。
「じゃあ、そういうことだから!さ、嵩雅様を起こしてこよー♪」
「あ……」
私まだ、返事してないのに……。
どっちみち、一番若い私には断ることは出来ない。
だから、この何日間か嵩雅様と言葉を交わしていない。
お会いすることも出来ていない。
最後にあったのはいつだろう……?
言葉を交わしたのはいつだろう……?
あの方の声が聞きたい――。
一目だけでもあの方のお姿を拝見したい――。
私はため息を一つつき、雑務へと取り掛かった。
嵩雅様を起こすのと、着替えの準備をしている先輩を横目に見ながら……。



「あれ?君この間の……嵩雅の世話している子だよね?こんなところで何しているの?」
普段はあまり使われない部屋の掃除をしていたとき、急に呼びかけられ、振り返るとそこには鈴原様が立っていた。
「こういうところって嵩雅についていない子がやるんじゃないの?」
いたいところつくな……。
そう思いながら、ため息混じりに答えた。
「嵩雅様のお世話は今先輩にやってもらっているんです。」
ちくちくと胸が痛むのを感じた。
本当は私が……嵩雅様のお世話をしたいのに……。
「あぁ、わかった。嵩雅最近変わったから、その女中に無理やり変わられたんだろ?」
私は驚いて鈴原様の方を見た。
この人は千里眼?
なんでもお見通しなの?


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