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ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

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『ewig〜願い〜by絢芽』-3

「どう?嵩雅に仕えて疲れてない?」
少し鼻で笑ったような感じで卑しさを込めながら聞いてきた。
(この人……苦手だ……)
直感でそう思った。こういうちゃらちゃらした感じの人はすごい苦手。
やっぱり、私は嵩雅様みたいな人がいい――。
「ちょっと、ちょっとー!!聞いてるー??」
鈴原様に話し掛けられ、我に返る。
私が無表情で鈴原様のほうを見ると、何も聞いてなかったと悟ったのか、小さくため息をつき笑った。
「だから、嵩雅に付いていて疲れない?って聞いたんだけど?」
少し、私の顔を覗き込みながら鈴原様は言った。
「別に疲れませんよ。あの方は冷たい態度をとっても心はお優しい方です。人々のことや私たちのことを一番に考えられています。そのような方にお仕えすることが出来て私は幸せに感じていますし、一番苦しんでいるのはあの方だと思いますから。」
この二ヵ月半、嵩雅様にお仕えしてそう思った。
あの人は孤独だ……。
かといって、誰かにいてもらおうともしていない。
じっと自分の殻に閉じこもっている。
私は――。
私は……その殻から嵩雅様を出してあげたい――。
心からそう思っている……。
「こりゃ、俺が入り込む隙間ないなぁ……。」
苦笑いをして鈴原様が言った。
そういえば、この人先輩女中をたらしこんで自分の女中にしているんだったけ……。
「なぜ、そう思うのですか?」
私は素直に今の気持ちを聞いた。
前の先輩女中の人たちはどうだったかは知らないけれど、少なくとも私とこの人は初対面だ。初対面の人にこんな発言ができるか不思議で堪らなかった。
「ほら、俺、嵩雅の女中に手を出しているってんで有名じゃん?」
ふざけているような言い方で鈴原様は答え始めた。
やはりこの人は苦手な類だ……。
そう想いながら私は簡潔に、そして即座に返した。
「はい。」
「ぶはっ!!即答〜〜!!」
この人は人に嫌がられるのを知らないらしい。
っていうか、人に嫌がられているのを気づかない楽天家なのかもしれない。
「ま、いいや。(笑)で、なぜ、手を出すかって言うと、ここの子達はさ、覇気がないっていうか、いやいや働いていて楽しそうじゃなかったんだよねぇ……。で、話を聞いたりしてたら、手を出しちゃったみたいな?」
……みたいな?じゃな〜〜〜〜い!!!!!!
何??本当にたらしみたいな考え方!!!!!
貴族ってこんなもの!?
なら私が見ていた嵩雅様は何者!?
と、私が混乱していた間も、鈴原様の話は続いていて……
「で、君もそんな感じかなぁ、って思って声かけたら全然そんなんじゃないもんねぇ……。俺ちょっと残念……って聞いている??」
「へ!?はい!?」
って、間抜けな返事してしまったのだけれども……。
「面白いねぇ……ま、疲れたらいつでも話聞くしさ!!俺嵩雅のとこ行くね〜!!」
私は鈴原様に一礼をし、庭の掃除に戻った。
(最後まで騒がしい人だったな……でも、そんなに悪い人かもしれない)
そう私は考えながら、日の暖かさを感じていた。
しばらくすると、鈴原様が帰っていくのが見えた。
いつもならこの時間はお香の時間だ。
きっと、嵩雅様もあの鈴原様の勢いに押されて疲れているかもしれない。
そう私は思い、お香の準備を整え、嵩雅様の部屋に向かった。


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