投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ewig〜願い〜
【悲恋 恋愛小説】

ewig〜願い〜の最初へ ewig〜願い〜 7 ewig〜願い〜 9 ewig〜願い〜の最後へ

『ewig〜願い〜by絢芽』-2

嵩雅は一瞬私のほうへ目を向けたが、すぐに逸らしてしまった。
「いや、なんでもない。」
やはり、この方の心には踏み込めない。
この方は大きな壁を、分厚い壁を自分のまわりに作って、人を拒絶している。
それなのに、寂しそうにしている。
ほんと、わからない人――。
私は、ふっと笑い庭を眺めながら言葉を紡いだ。
「赤い手の ゆらゆら舞う葉 掴みして 透かしては見る 朧月かな……」
私はゆっくりと目を閉じながら、続けた。
「ここにいると、『外』の世界が幻のように思えてきます。もみじの葉が赤く色づいて庭を染めています。けれど、外にはそんな真っ赤な世界はなくて、あるのは人間のアカだけです。まるで、よく絵に描かれる地獄絵図を見ているような気分に陥ります……。」
わたしは静かに語った。
もみじがどんなに綺麗に赤く染まっても、ここのような綺麗な景色は外にはなくて……。
私が俯いたままでいると、急に嵩雅様が声をかけてきた。
「お前の家族は『外』であろう?心配ではないのか?」
今までお互いに干渉しあわない間柄だった。そもそも、嵩雅様は女中には絶対干渉しない。
たとえ、女中が他の貴族の方と相通じていても、決して干渉しなかったのに、その嵩雅様が私のことについて聞いてきたのだ。
私は驚き、戸惑いながらも、少しずつ話した。
「父は二年前に亡くなりました。そして母も……。兄弟たちはばらばらに奉公に出されてますゆえ……。心配ではないです……。」
私は両親が亡くなったと聞かされたときにはもうここで下働きをしていた。
もともと農家で、しかも決して裕福でもなく、その日暮らしていくのがやっとの貧しい家だった。二人が暮らしていくのもやっとの生活だったのに、兄や姉が生まれ、弟たちも生まれ、私の家は苦しくなった。兄は家に残り、姉は嫁に出された。まだ幼く、嫁ぐこともできない私は、ここ一宮家に奉公に出された。
そして、兄から父が亡くなったと聞かされたのは二年前、そしてその一年後母が亡くなった。
弟たちはみな奉公に出された。
一人残った兄は父と母が亡くなる前に結婚し、その日生活を今も続けているらしい。
そのことなどをいろいろ考えてしまい、わたしの心は曇っていった。
本当は、心配でたまらない。
嫁に行った姉はうまくやれているのだろうか……。
幼い弟たちはちゃんと泣かずに、弱音も吐かずに奉公できているだろうか……。
私はそのことが嵩雅様に見抜かれてはいないかと心配になった。
嵩雅様に気づかれぬように、そっと嵩雅様のほうを見た。
嵩雅様は恐らく、すべてを見抜いていたのだろう。
慈しむような、愛しいような、優しい目でかすかに微笑んで私を見つめていた。
私は全身に電気が走るような、
全身の血が一気にめぐるような、
私の中の何かがはじけるような感覚に襲われた。
おそらく、そのとき初めて嵩雅様に対するこの想いが恋だと気づいた瞬間だったのだと思う。




ある日、私が庭の掃除をしていると、一人の男が話しかけてきた。
「最近、嵩雅の身の回り世話している子だよね?」
振り返ると、明らかに貴族って感じの、遊んでいますって感じの、男がそこに立っていた。
「……鈴原(すずのはら)様ですよね?どうかなさいましたか?」
この男は鈴原初瀬道(すずのはらはせみち)。
嵩雅様の遊び仲間みたいな人。
見た目通りの貴族で、貴族らしく女遊びも多い。
嵩雅様とは正反対の人――。
だからこそ、嵩雅様と馬が合うのか、結構一緒にいるところを見ている。
「嵩雅のところに付いて、もう二ヶ月半経ってるんだっけ?」
さすが、嵩雅様と親しいだけあって、私が嵩雅様に仕えるようになった時期もばっちりだ。


ewig〜願い〜の最初へ ewig〜願い〜 7 ewig〜願い〜 9 ewig〜願い〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前