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GAME IS MEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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GAME IS MEMORY-3

女子を部屋に上げるのは産まれて初めてで、正直、少し緊張していたよ。
最初の内は他愛のない話が続いたけど、10分も持たなかったな。
それで、手っ取り早い団欒方法として、僕等はTVゲームをすることにしたんだ。
利恵も多少はTVゲームに興じることはあったらしいけど、有名RPGシリーズとか、その手のメジャーなものしかやらない人だった。
対する僕は、誰も知らないようなマニアックなやつばかりを集めてたな。
米国から輸入されたグロテスクなホラーゲームとか、元々は英国のパソコンゲームだったやつとか、香港で発売された日本のゲームの盗作とかだね。
父親の仕事の関係で、そういう系統のゲームを手にいれ易かったんだ。
人格を疑われるような黒いゲームから保留しいって、消去法で残ったのは、『MYTOWN』という捻りのないネーミングのゲームだった。
今とは違って、当時のソフトはまだカセットタイプのゲームが主流。
僕と利恵はそのゲームで遊ぶことになったんだ。
『MYTOWN』はシュミレーションゲームで、現代の少年がひょんなことから魔法の世界に来てしまったという設定。元の世界に帰るためには、街を作って、その街の活気とか平和のもたらすエネルギーから作った鍵で、現世への扉を開かなければいけない。実に三文的なストーリーだよね。
だけど、意外と利恵はそのゲームに興味深々だった。
そして、僕と利恵の、世界で一つの街作りが始まったんだ。
『シムシティー』というゲームを知ってるかな。基本的には同じ要領。
定めれた土地に家や施設を作って、街を発展させていくんだ。
最初は、人口100人程度の村なんだけど、最終的には10万人規模の都市を作らなければいけない。しかも、治安が悪かったりすればゲームクリアはできないんだ。
主人公である、現代世界から迷い込んだ少年。彼の名前を僕にして、そのナビゲーター役である、魔法使いの少女の名前を利恵にしたんだ。
以前、僕がそのゲームを遊んだ時には、人工3000人までいった所で挫折していた。
最初は僕がゲームを進めていたんだけど、思うように街は発展しなくてね。見かねた利恵が僕と代わってコントローラーを手にしたんだ。
なかなかどうして。利恵の創設者ぶりは見事なものだった。
瞬く間に街は栄えて、ものの二時間で僕の記録を越えて、人工は4000人に到達したよ。
その時、僕は初めて彼女を尊敬したな。
僕等はお互いに、アレをこうしたらどうだろう。それまずいから、こうした方が良い。とか、ゲームの中の少年と少女そのままにアドバイスを交わした。
やがて日が暮れる頃には、人工は5000人になってたよ。
僕等は思いの他、『MYTOWN』に夢中になってた。
利恵が帰る時、僕等は約束した。
二人で街を完成させよう。
約束と言っても、ドラマチックなものじゃなく、子供の、明日もまた遊ぼうね。という程度のものだったんだ。
僕は利恵が帰った後は、そのゲームを続くけるつもりはなかった。
このゲームをする時は、利恵が隣にいる時。そう決めていた。
翌日は案の定、二人揃って木山に説教されたよ。反省文まで書かされたし、罰として、利恵は部活動を一週間停止させらることになった。
全然罰じゃないよね、それ。木山は自分の顧問する部活の生徒たちが、毎日部活動を楽しみにしている。とでも誤解していたんじゃないかな。自惚れも甚だしいよ。自意識過剰もここまでくれば、一つの才能だよね。
何はともあれ、そういう訳で、利恵は公然と僕の家で『MYTOWN』の都市化計画を進めることができたんだ。
その日の放課後から、僕と利恵は、二人の街を着実に発展させていった。
日曜日にも僕等はゲームに興じていたよ。
私服姿の利恵を僕の部屋に上げた時は、少しドキドキしたもんだ。
ポテトチップスとコーラを傍らに置いて、僕は現代から迷い込んだ哀れな少年。利恵は少年に道を示唆する魔法使いの少女に為りきって、電子上の世界に没頭していたんだ。
やがて彼女の部活停止期間は終わってしまったけど、彼女は時々部活をサボるようになった。
そして、僕の部屋でゲームをした。
あの日々は本当に楽しかった。
今思えば、僕は彼女に恋をしていたのかもしれない。
当時は単純に、偶然で仲良くなった、少し気になる女の子。としか認識していなかったけど、やっぱりそれは、世間一般で言われる所の恋だったんだと思う。


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