投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

GAME IS MEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

GAME IS MEMORYの最初へ GAME IS MEMORY 1 GAME IS MEMORY 3 GAME IS MEMORYの最後へ

GAME IS MEMORY-2

当時、校内で盗難事件が多発していたせいで、臨時の職員会議が行われることになったんだ。それで木山は職員室に戻らなければいけなくてね。
木山は僕に、逃げるなよ。と釘を指して出て行ったんだ。利恵を僕の監視役に任命してね。
千載一遇のチャンスと見た僕は、無論、尻尾を巻いて逃げ出すことにしたさ。
けれど、利恵が引き留めた。
当然だよね。僕が逃げたら、木山の怒りの矛先はまず、利恵に向けられるんだから。
僕は腹痛がして保険室に行ったことにして欲しい。そう彼女に伝えたけど、拒否された。見え透いた嘘だったからね。
じゃあ、代わりに君が書いてよ。そうすれば、全てが丸く収まる。僕の提案を、利恵はまたも拒否した。
曰く、字が違うからすぐばれる。
じゃあ、君が考えた俳句を、僕が書く。
それも却下された。
曰く、めんどくさい。
僕はだんだん腹が立ってきたよ。基本的に器の小さい男だからね。僕は。
フルハウスが台無しになったり、木山の説教だったり、普段は使わない頭を酷使したストレスだったり、利恵の冷たい態度だったり、それらの要素が僕の臨界点を越えさせたんだ。今思うと、随分と沸点の低い少年だった。
僕はヤケクソになって俳句を書いたよ。木山に対する、一種の風刺だね。今、言葉にするのは気が引けるような、酷いやつさ。
利恵は僕の書いた俳句を読んで、顔を曇らせた。
こんな俳句を先生に見せたら、それを見過ごした私まで先生に殺される。
そんなことを彼女は言った。
中学生は体裁に逆らうもんだ。
そう言い残して放送室を出ようとすると、やはり彼女は、必死で僕を引き留めた。
僕はもう、なるようになれ。といった感じだったからお構いなしさ。
死にたくないなら一緒に逃げればいい。
僕はそう言って、利恵の手を引いて部屋を出た。
もし、木山が人間じゃなくて本当に鬼だったら、その様子は割りとドラマチックなものだよね。
放送室を出た僕等は、そのまま教室に引き返した。
相変わらず利恵は困惑していたけど、僕を説得するのは無理だと判断していたようだ。
僕は何だか、木山に一矢報いた思いで、むしろ溜飲を下げた心地だったよ。
だけど、二人で教室に戻った後、僕等は誤算に気付いた。
見ると、みんな机の上に国語の教科書を乗せてあった。
五時間目は国語の授業だったんだ。勿論、担当は木山だ。
放送室に戻ろう。そう利恵は提案したけど、その頃すでに職員会議も終わる頃。
僕は諦めたよ。
諦めたっていうのは、そのまま教室に居座るという意味ではなくて、帰宅するという意味。
俳句の件がなくても、国語の授業は受けたくなかったし、六時間目はLHRだ。帰っても特に支障はない。
僕は慌てる利恵を尻目に、空っぽの鞄を持ってきた。
君も帰れば?
僕は冷たく利恵に告げると、教室を出た。
生徒用玄関で靴を履き替えていると、後から利恵がやって来たんだ。手には鞄を持っていた。
結局帰るんだ?
僕がそう言うと、利恵は憤然として答えたよ。
完全にあなたのせいでしょ。
僕は苦笑した。二人一緒に校門を出て、暫く一緒に歩いたよ。帰り道は殆んど同じだったからね。
利恵は一年の時に転校してこの街に来ていたから、家はすぐ近くでも小学校は別々だったんだ。
歩いてたら、急に利恵が気まずそうに言った。家には母がいるから、早退したことがばれてしまう。と。
気分が悪くて早退したことにしろよ。
と僕は提案した。
あの人に仮病は通用しないわ。
と利恵は答えた。
じゃあ、何処かで適当に時間潰せば?
とまた提案する。
昼間に制服姿でウロウロすると、世間の目が冷たいから嫌。
と否定する彼女。
落ち込む利恵を見て、流石に僕にも罪悪感が込み上げてきたよ。
それで僕は、新たに提案したんだ。
じゃあ、うちに来くればいい。
そして、僕等の関係が始まった。


GAME IS MEMORYの最初へ GAME IS MEMORY 1 GAME IS MEMORY 3 GAME IS MEMORYの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前