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GAME IS MEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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GAME IS MEMORY-4

『MYTOWN』の進行状況は、最初の内は順調だったよ。
日々、右肩上がりに人工は増化していったし、施設も普及してきた。
だけど、人工1万人を越えた辺りで、急に伸びが悪くなった。
人が増えるに連れて、街の治安は悪化し、秩序は乱れ、平和度数を示すパーセンテージが下がってきたんだ。
僕と利恵は、若町長よろしく難しい顔をして試行錯誤を重ねていった。
変な話なんだけどさ、何だか、僕にはその街が、僕と利恵の子供みたいに思えたよ。子供というより、二人だけのペットかな。
そいつは丁度、反抗期真っ只中で、親(あるいは飼い主)である僕たちを困らせるんだ。
幾つかの困難を乗り越えて、僕等の街が人工5万人に到達したんだけど、予想外の事態が起きた。
街に伝染病が蔓延したんだ。
僕等は慌てて説明書を開いたけど、伝染病なんてシステムがあることは、何処にも表示されていなかった。
良くある隠し要素の一つらしい。
性格の悪いスタッフだよね。普通、隠し要素といったら、ゲームの進行を手助けする裏技的なものだろうに。
伝染病のおかげで、人工の半分が死滅したよ。経済への影響も馬鹿にならない。これが実際の出来事だったら、ニュースはこの話題で持ち切りだろうね。
何とか感染原は突き止めたけど、すでに時遅し。病気は人から人へと広がっていった。
けど、この状況を打破してくれたのは、魔法使いの少女、利恵だった。
それは苦肉の策だったんだよ。
魔法使いの少女は、様々な魔法で主人公を手助けしてくれるんだけど、その中にはひときわ強力な魔法があった。
時を巻き戻す魔法さ。それを使えば、プレイヤーの好きな時間まで時を戻すことが可能。つまり、伝染病が蔓延する直前までタイムスリップして、未然に予期した事態を防ぐことができるって訳。
だけど、その魔法は禁断の奥技なんだ。
少女の師匠が死の間際に彼女に託した魔法という設定で、ゲーム中で使えるのは、たったの一回だけ。
しかも、その魔法を使ってしまうと、彼女は大半の魔力を失い、他の魔法を使用することにも大きな制限が課せられるんだ。
諸刃の刃であり、僕等に取っては切札だった。
僕はその魔法を使うのは嫌だったよ。
魔法の使用は利恵に任せてたけど、できることなら使わせたくなかった。
魔法使いの少女を、ゲームの登場人物というだけでなく、利恵そのものみたいに思ってたからね。
だけど、背に腹は替えられない。
結局、利恵はその魔法を使ってしまったんだ。
時は逆行し、街は伝染病に犯される前の殷賑な頃に戻った。
利恵の決意を無駄にしないため、僕は必死で伝染病対策を打ち立てた。
その結果、街は何事もなく発展していったよ。
切札を失い、他の魔法も容易に使うことができなくなった僕等は不安だった。
まだゲームは半分しか進んでいないのに、あの魔法を使ってしまったのは失態だったんじゃないか。そんな気がしていた。
だけど、杞憂だったよ。どうやらあの伝染病は、このゲーム最大の関門だったらしく、それ以上の問題は起きないまま、人工は7万人にまで発展したんだ。
この調子でいけば、ゲームクリアも目前だ。僕と利恵はそう確信していた。
ゲーム上の街が繁栄していくに連れ、僕と利恵の仲は深まっていく。そんな感慨もあったな。
だけど、結局、ゲームクリアはできなかったんだ。
14歳という年頃の少年は、なんて馬鹿なんだろうね。
本当に、愚かで、未熟でガキなんだ…。
学校の昼休み、僕はいつものように友人たちとポーカーをしながら、教師の悪口なんかを言い合ってた。
話題の中心はやはり木山で、自然な流れで、放送部へと会話は移った。
うちのクラスで放送部と言えば、利恵しかいなかった。
友人たちは、心ない言葉で放送部を揶揄したよ。
曰く、声はキレイだけど、ちょっと根暗そう。
曰く、意外とあんな連中に限って、淫乱なんだ。
今なら、そんなことはない。少なくとも利恵は違う。そう抵抗することも出来るさ。
だけど、14歳っていうのは、アイデンティティの何たるかも分からない年頃だろ。
周りに合わせることに必死で、みんな本心を隠したまま、本音と建前を使い分けてる。それは大人だって同じことだけど、14歳は特にその傾向が顕著で、僕も例外ではなかった。
僕は友人たちの悲しくなるような言葉を聞きながら、反論もせず、曖昧な笑みを浮かべてポーカーを続けていた。自分が馬鹿にされたみたいに悲しかったし、怒りも覚えたけど、何も言えなかった。


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