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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜散る〜』-3

「そいつは大いなる偏見だぜ。そもそもなんでも男に任せようって魂胆が俺はどうかと――」
「……いいから早くしなさいよ」
私が凄みを利かせると彼は一瞬にして黙りこみ、おとなしく行き先を決めてくれた。
それでいい。
もし、ジェットコースターにしようなんて言い出しても、要が決めたことだから私は絶対文句を言わない。覚悟を決めて、何でも付き合ってやるつもりだった。
「じゃあさ、アレにしようか」
視線を移した。要が指差したのは小さなコーヒーカップ。数あるアトラクションの中でも相当ショボい部類に入る。
いくらなんでも、最初からこれ?私は呆れ顔で陽気に歩き出す要を見上げた。
すると要はフ、と笑って、

「これならお前も乗れるしな」
「え…?」
私はドキッとした。
なぜだか不意に心の中を見透かされたように。
そこで、気付いた。

――ああ、そうか…

私は昔から、たぶんこういうのが苦手で、要はそれを知ってたんだ。知ってて、気遣ってくれてるんだ。
「ありが、と…」
「ん、何?なんか言った?」
「ううん。なんでもない。行こっか」
私は気分よく彼の手をとると、ふわりと風を纏って少し急かすように駆け出した。





私達はその後、存分に遊園地を満喫した。
モノレール、ミニコースター、ゴーカートにバイキング……
どれもこれも身長制限のない乗り物で、お子様でも安心して楽しめるものばかりだった。
まあ正直、子供以下の私としてはありがたいコースだ。

散々に遊んで春の西日が傾きかけてきたころに、最後に行きたい場所があると要が言った。
「…観覧車?ああ、ここに来るときに見たヤツね」
「うん。まだちょっと時間あるし、別にいいだろ?」
締めに観覧車を持ってくるなんてベタだなぁ、と思いつつ頷いてみせた。
確かにそれなら私でも大丈夫だし、一つくらいはらしい乗り物に乗っておくのも悪くない。


既に人気のない入り口からゴンドラに乗り込んだ私達は向かい合わせに座った。
扉が閉じる音に合わせて、ゆっくりと地面が遠退く。
次第に高度が上がっていって、だんだんと眺める景色も変わっていく。

そこから見下ろす私達の街が夕枯れに染まりつつ朱く色付いていくのが、すごく綺麗だった。

「今日は、楽しかったよ」
自然と、そんな言葉が口をついて出た。
要は穏やかに息をついて、
「よかった」
とホッとしたように笑う。
その私に向けられた笑顔が嬉しくて、応えるように私も笑った。
「誘っといてなんだけど、来てくれるとは思ってなかったんだ」
「やだ。そこまで薄情じゃない」
「うん、わかってる。お前がそんなヤツじゃないことくらい」
そう言って要は遠くを見つめた。窓ガラスに映った要の大きな瞳。気付いてしまった。

――ここにはいない誰かを探していることに…。


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