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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜散る〜』-2

「なあ」
そう言いながら、彼は持っていた携帯灰皿に灰を落とした。変なところで几帳面なヤツだ。
「ここの公園ってさ、春になるとスゴく綺麗な桜が咲くんだって。知ってた?」
私は首をふった。そんなの知るわけない。だって今の私は、この場所に訪れる春をまだ知らないのだ。
「意外と知られてないんだよな。ここを通る人はみんな素通りしてくから」
「ふーん」
私には、わからない。
でもコイツがそこまで言うその花は、一体どんな色をしているのだろう。
「知られざる桜、か。なんだか秘密の隠れ家みたいね」
私がそう言ってやると、要は少し驚いたような表情を見せた。まじまじと目をパチクリさせながらこっちを見ている。何か変なこと言っただろうか?
「なによ」
「い、いや…なんでもない。それよりさ、二人で見にこないか。その桜」
突然の誘いに、私は露骨に嫌な顔をした。
知っていたから。
彼が、その瞳に映り込む遠い私を想っていることを。
気付いてしまったからだ。

自分に、嫉妬していることを。
そうだ。
いつの間にか私、要のことを―――





その日、私は駅前の踊り場で一人要を待っていた。
いや、正確には待たされていた。
約束の時間はもう五分前に過ぎている。一時間くらい前に来ている私も私だが。
「遊園地に行こう」と要に誘われたのは昨日のことだった。私は当然、というか条件反射でいつも通り冷たくあしらったけど、どうしてもと食い下がる要に押しきられる形でOKしてしまったのだ。
――なのに、これじゃ私だけ張り切ってるみたいじゃない。
要が来たら2、3発かましてやろうか、などと思っていたら後ろから声をかけられて、そこに彼がいた。
「ゴメン、待った?」
大して悪びれる風もなくそんなことを言うので、私も呆れてなんだか怒る気も失せてしまった。
「もういいよ、早く電車乗ろ?」
私達は予定してたより一本遅い電車に乗った。
目的の遊園地は二つさきの駅を降りてすぐの所。吊革にたって揺られていると、窓の向こうに観覧車が近付いてくるのが見えてきた。
「意外と近いのね」
ポツリとそんな言葉を呟くと、要はちょっとびっくりした顔をこちらに向けた。。
「アレ。それも覚えてないのか」
彼の口ぶりから私は前にも行ったことがある場所なのか、と想像した。
なるほど。要と二人で過ごした時間は例外なく消されているのだ。
「うん、でもその方がいい。なんか、新鮮だし」
そうやって私は自分を納得させた。せっかく要が誘ってくれたのだ。無理矢理でもテンション上げて楽しそうにしなきゃ、なんか申し訳ない。
そう、私が喜ばなきゃ彼の笑顔が見えないんだから。





「何から乗ろうか?」
入り口で立ち止まった私達はとりあえず今日一日のプランを話し合った。
遊園地での乗り物決めってのはまず順番からして大事なんだ、というのが彼の持論らしい。
「どうする、最初は?」
「う〜ん、そうね…」
私は散々迷ったが、どうも考えがまとまらない。
そもそもジェットコースターのような絶叫系が駄目な時点で、私が遊園地に来る資格なんてないように思える。
「要が決めてよ」
「俺が?」
「こういうトコ、初めてだし…それにリードするのは男の子の役目でしょ?」
要は首をふった。


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