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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜散る〜』-4

「…………」
窓の隙間から風が吹き、私の頬を撫でていく。いつかの日、かつてあった何年も前のその日。
もしかしてその時もこんな風に二人で観覧車に乗って、はしゃいで、何を話していたんだろう。
私はそれを要に聞いてみたかった。
でも、出来なかった。
私のことを嬉しそうに話す要の顔が浮かんだ。
それだけで、胸が痛くなった……




「てっぺん、もう過ぎちゃったね」
いつのまにか、私達を乗せたゴンドラは頂上を越えて地面へと下り始めていた。もうすぐ、終わってしまう。

「……要」
彼の名前を呼ぶ。振り返りにこりと笑う要がそこにいる。
私は言った。
「ごめんね。私、知ってるんだ。本当は要が辛いの。わかってた」
わかってて無視した。
だって、私には要が必要だから。彼の気持ちに応えてあげる事はできないのに、卑怯な私はそれにすがることで自分を保とうとした。なんて女なんだろう。

「…でもね、要が期待しても私の記憶は戻らないよ。これからも、ずっと。
だからもう、苦しめたくないよ。傷付いてくあなたを見てるのが辛いよ」

「……」

彼が私の名を呼ぶ。かすれるような声で。今はもう、存在しない私の名前を。
日が落ち、何もかも真っ暗になっていく周囲の景観に二人の未来が重なった。
終りなんて、来なければいい。明日なんて、いらない……。
でもそれじゃ、なんにも変わんなくて。だい嫌いな自分に別れを告げられなくて。
馬鹿だね、私。
これじゃ堂々巡りだ。
答え、出さなくちゃ……

「要。ここを降りたら、二手に別れよう」
そして、別々の道へ。
「振り返らずに、真っ直ぐ前だけを見て帰ろう。明日からはまた同じクラスで授業を受けて、進路に悩んで、卒業まで…」
要の顔は見なかった。ただじっと足元の床に目を落として都合のいいことを言っている私。
これ以上、彼との思い出をつくるのが恐い。
いつ忘れていってしまうのかとても恐い。
「俺は……」

――プシュ。

要が、何かを言おうとした前にアッサリとドアが開かれた。私は逃げ出すように席を立つと一人で外に出た。後ろは振り向かない。
それが、彼との約束だから。決別の、証だから。

背中には、じんわりと汗。気が付けば咳を切って駆け出していた。
頬には、ぽろぽろと涙。
知らぬ間に……溢れ出していた。

――春になったら、二人で見にこないか?

要の言葉が頭をよぎっていく。私は首を横にふった。
ごめんね。
一緒に行くのは無理なの。桜は、あまりにも綺麗に咲きすぎるから。



いつか、散ってしまうのがわかっているのなら……


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