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双子月
【学園物 官能小説】

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双子月2〜葉月〜-1

おとうさん、いつもありがとう。はづきはおとうさんのことだいすきだよ。

今もう色褪せてしまったメッセージカード。
水色のクレヨンで一生懸命かかれたその言葉は、届くことはなかった。



「葉月〜今日は拓海さん入るってさ〜行くよね?」

放課後、葉月が教室で帰りの支度をしていると、廊下のほうから、まわりを気にしない大きな声で声をかけられた。

「行く〜!朋香そこで待ってて。」

高校に入って友達になった朋香(ともか)だった。
朋香は学校の中でも目立っていた。
脱色を繰り返しているせいで見た目でわかるぐらいパサパサしている髪を赤く染め、制服もいつも自分流に着崩している。先生たちからは目の上のタンコブの朋香だが、友達は多かった。

「ホント葉月は拓海さんLOVEだね〜。」

隣りに並んで歩く朋香はニヤニヤ笑いながら葉月を冷やかす。

拓海(たくみ)は、葉月達がいつも行くクラブのDJだ。葉月は一度ブースを見せてもらったことがあったのだが、そのときの拓海のすごく楽しそうな姿に一瞬にして惹かれてしまったのだった。

「いいじゃん。私には拓海さんだけなの〜。」

葉月達はいつも、帰りに駅のトイレで着替え、ファーストフード店に寄り、遊びに行くというのが定番だった。
葉月は足取り軽く駅までの道のりを歩いて行く。
それに合わせて朋香もいろんな話をしながら並んで歩く。
笑いあい、ふざけあっている様子はごく普通の少しやんちゃな女子高生という感じで、つい数時間前の屋上での事など、なにもなかったかのようだ。

もう駅目前。
そこで葉月はぴたりと足を止めた。

「葉月?」

「ゴメン、朋香、先行ってて。」

葉月はそれだけ言うと、表情を強張らせ、見たくないものから目を背けるように踵を返してしまった。朋香はわけが分からず、首を傾げる。

「どうしたの?」

「忘れ物、思い出したの〜。」

ゴメン〜と、笑いながら葉月は謝ると、じゃあね、と言って歩きだす。

「な〜にやってんのよ、先行ってるからね。」

朋香は、一瞬見せた怖い顔が気にかかったが、何も言わず、いつもの調子で言った。

駅の前はいつもどおりたくさんの人でごった返している。そんな中、葉月が見たものはなんだったのだろう。朋香は気になりながらも振り返らずに駅の構内へと入っていった。

葉月の見たもの、見たくないもの。

駅の前に居たのは父だった。スーツを着こなす姿は自然で、いかにも仕事が出来る人という感じの父は、やはり仕事中なのだろう。携帯電話で何か一生懸命話している。
葉月は父としばらく顔を合わせていなかった。話すらしていない。
葉月は自然と父を避けるようになっていたのだ。


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