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十の夜と夢の路
【悲恋 恋愛小説】

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十の夜と夢の路-16

そして、十夜くんが川に落ちた瞬間──
『空音っ!!』
彼はすべてを察したのか、わたしに振り向き叫んだ。だが、だんだんと流されていく。わたしにはとても良い気分だった。

けれど、誤算が起きたのだ。
彼は流されながらも、何かを取り出し、わたしに向かって投げたのだ。それを受け取ったわたしは、驚愕した。
十夜くんが流されながらも投げたそれは、ルビーのペンダントだった。十夜くんは、気付いてくれていたのだ!

直後わたしは自分の過ちに気付いた。けれど既に手遅れ。それでもわたしは彼を助けたくて、助けを呼んだ。それが父だ。

父は川に飛び込み、十夜くんを無事に助け出した。その自らの命を犠牲にして…………。


しかしそれから、十夜くんはわたしに冷たくなっていった。その灰色にくすんだ日々は、わたしの胸を裂くような気持ちでいっぱいだった。悲しくて、毎夜毎夜泣いた。

そのまま月日が流れ、そして、閉校を迎え、別の私立中学校の始業式当日、わたしは閉校された教室に忍び込み、十夜くんから受け取ったペンダントを身につけ、わたしが買った方を砕いた。その破片こそが、教室で見たあの赤いガラス辺のようなものだったのだ。そう、わたしは教室でそれを見たときにすべてを悟ったのだ。


何故あんなことをしたのか──自らのペンダントを砕いたのか──解らない。十夜くんに対する贖罪だったのか、単に自分への腹立ちからだったのか。けれど、その行為は大きな流れを断つものになった。
その直後、わたしの記憶は完全に潰えたのだ。


すぅっと、黒いものが脳内をよぎる感覚に襲われる。十夜くんは顔をこわばらせたまま動かない。わたしの話を聞きやっと思い出したといった具合だ。
「ねっ?十夜くんを殺そうとした、ぜんぶぜんぶわたしがいけないの……解るよね?」
そう、朝霧空音は罪人で、なにもかもわたしが悪いのだ。すべてを悟った今、十夜くんはそれを認めざるを得ないのだ。
「だから、わたしが謝らなきゃだめなのっ!」
わたしが、声を張り上げて叫んだ直後…………


「約束……忘れたのか?」
何故そんな行動に至ったか解らない。だがきっと理由など要らないこともあるのだ。やりたいことに理由など要らない。
だから俺はそう言いながら、夢路を──空音を抱き締めていた。
「わわっ!?」
さっきまであんなに険しい表情をしていた空音も、顔を真っ赤にしてあたふたしている。本当なら俺も恥ずかしいのだが、それでも勝手に彼女を抱き締めていた。
そして、言葉を続ける。
「あの日の約束、覚えてないのか?」
「約束…………?」
俺が問うと、空音は首を傾げた。覚えてなくて無理はない。俺も今しがた思い出したばかりだからだ。
「お前が俺の家に来た2日目、俺が言っただろうが……」
「あっ…………あれって、まだ続いてたの?」
彼女はやっと思い出したらしく、困ったような顔をする。俺は静かに告げた。
「『謝ったら駄目だ』っていう約束、まだ続いてるから……」
俺の腕のなかで、彼女はくすぐったそうな表情をする。急な展開についていけないのか、この異常な体勢に驚いているのか。だが俺は彼女を放す気などさらさら無く、しばらくの間、ずっと抱き続けていた。


2日目の夜、病院から帰ったあと、彼女があまりにも気にして謝るものだから、俺は『謝るの禁止』と告げた。それがまさかこんなところで役に立つとは。


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