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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの恋心-2

「光輝、いい加減教えろって!昨日、どこに行ってたんだよ?」
田辺は、休み時間の度にしつこく訊いてくる。
(そんな事、知ってどうすんだよ?)
「サボりたい気分だったんだよ。たまには良いだろ?」
「今までそんな事、一度も無かったじゃねぇかっ!」
「だから言っただろ?“たまには”って」
(ったく、鬱陶しい…)
「納得出来んっ!」
「はぁ…」
(勝手にしてくれ…)


田辺の質問は、放課後の課外授業が終わっても尚、延々と続いている。
何度も繰り返される同じ質問に、もういい加減ウンザリだ。

「田辺っ!もういい加減に……」
『止めてくれ』と言おうとして田辺を見ると、田辺の視線は教室の入り口の方へと注がれていた。
俺もつられて、そちらへと視線を向ける。
(なんで、ここに?)
見た瞬間、田辺が何を見ているのかがすぐに分かった。
教室の入り口…何故か、聖がそこに居る。

聖は恥ずかしそうにうつ向いて、『失礼します』と言ったきり、そのまま固まってしまった。
(もしかして…俺に会いに来てくれたのか?)
心の底から嬉しさが込み上げて来て、俺は反射的に聖に駆け寄ろうとした。
けど、その体が椅子から離れることはなかった。
松田 博也(マツダ ヒロヤ)の存在に気付いたから……

聖の後ろに立つ博也は、聖の頭をポンポンと叩きながら何かを言っている。慣れた様に…柔らかい笑みを向けながら……
(なんだよ、博也の奴…聖に気安く触るなよ)
博也の行動を腹立たしく思う。
聖がこの教室に来たのは博也が連れて来たからだと悟って、更に腹が立った。

少ししてやっと顔を上げた聖は、真っ先に俺の方を見てくれた。あの懐かしい笑顔を浮かべて……
でも俺は、あまりにムカムカしていて、その視線を直視する事なんて出来ない。


「なぁ、あの二人って…やっぱ付き合ってんのかなぁ?」
俺が苛立って目を逸らし続けている間も、田辺はずっと聖の姿に釘付けになっている。
(『やっぱ』ってなんだよ?)
「さぁね。博也に訊けば?」
俺は、視線を机の上の参考書に落としたままで言った。
内心は自分だって聖と博也の関係が気になって仕方ないのに、無理に興味が無いフリをして……

「冷たいなぁ…光輝って、本当に宮木さんに興味無いよな?まぁ、俺的には今さら興味持たれても困るんだけどさ!」
(『今さら』か…)
「あっ、オマエ、ちゃんと分かってるか?あれが宮木さんだぞ?光輝っていつも適当に流して、宮木さんの姿をちゃんと見た事無かっただろ?あの可愛いのが宮木さん!俺の大好きな!」
(そんな事、分かってるって…)

何を言っても“今さら”で片付けられてしまう様な気がする。
ずっとこんなに近くに居たのに、俺は聖に気付かなかった。いや、気付こうとしなかった。
『あれが宮木さん』と教えられても、その姿を見なかった。
聞けばすぐに気付いた筈なのに、そのフルネームを知ろうともしなかった。
“ヒジリ”以外の人間には、興味が無かったからだ。
だからこそ“今さら”。
(今さら、その“宮木さん”が大切な人でした、なんて…あまりにも虫が良すぎるよな……)


頑なに目を背けていた俺だけど、教室内にいきなり響き始めた博也の笑い声のせいで、つい気になって聖の方を見てしまった。


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