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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?3〜堂々巡りと結論情事?〜-8

――コンコン

『誰だ?』
ドア越しに響いた「社長」の声。
「社長、倉本 誠司です」
改めた口調で名乗る。
「…入って」
すると、「玲」の声が入室を促してきた。誠司はなんとなく辺りを見回し、誰もいないのを何故か確認してからドアを開け、さっと部屋に入って後ろ手にドアを閉めた。
「…呼び方、使い分けてるのね。嬉しいわ」
真っ先に目に飛び込んできたのは、髪を結い上げて眼鏡をかけた「社長」の姿。彼女は穏やかな口調で微笑み、歩み寄ってくる。
「…五日…案外長く感じたわ」
言いながら、誠司の後ろにあるドアノブに手を伸ばし、音を立てて鍵を閉める。それから彼女は、最初に立っていた場所に戻りつつ、結い上げた髪を下ろした。
「…さて、聞かせてもらおうかしら」
振り返りながら、眼鏡を外す。

「霧澤 玲の告白に対する倉本 誠司の返事を、ね」

――そして、誠司は五日ぶりに「玲」と対面した。
「……」
誠司は手に持っていた鞄を下ろす。こちらを見つめる玲と視線を合わせ、心を落ち着かせるように小さく息をつく。
「……結論から言います」
そして、明瞭な口調で話し始めた。

「…俺は……玲さんの事をちゃんと知って、玲さんにも俺の事をちゃんと知ってもらうためにも、玲さんと付き合いたいです」

「……」
玲は黙っている。だがその態度からは、結論の理由を求める雰囲気が醸し出されている。その雰囲気を感じ取った上で、誠司は話を続ける。
「…俺は玲さんの事をほとんど知らない。社長としても、玲さんとしても。それに玲さんだって、俺について知ってるのは人から見た印象だけ。自分自身が見て感じたものはほとんどありません。…でも、俺は玲さんに、少なからず好意を抱いています。だから、互いを知るためにも…俺は玲さんと付き合いたいです」
「…そう。それが誠司君の答えなのね」
呟きの後、玲は再び誠司に近付く。
彼女の手がすっと上がり、誠司の頬を優しく撫でる。

「……本当に、好意を抱いてる?」

――彼女の目が、すうっ、と細められる。その視線は妖しさと同時に微かな冷たさをたたえ、誠司は生唾を飲み込む。
そして、玲の視線を真っ直ぐ受け止め、決然とした態度ではっきりと言った。

「…はい」

――沈黙。

「……嬉しいわ。私の告白、受け入れてもらえて」
ふ、と玲が笑った。頬を撫でていた手が下り、誠司の背に回る。
「玲さん…」
誠司は努めて平静を保ちながら、自身に抱きつく玲を抱きしめる。
それは、自分なりに考え抜いた末の結論を受け入れてくれた事への感謝――のつもりだったのだが。
「……誠司君…」
何を思ったのか、誠司の背に回された腕に力がこもる。同時に、玲の体がどんどん誠司に密着してくる。
「…れ、玲さん…?」
たったそれだけで、平静を保とうとしていた誠司は狼狽えてしまう。
「誠司君…」
しかし、誠司を狼狽えさせる原因である玲はどこ吹く風。密着した状態で顔を上げ、顔を赤らめ始めた誠司を見上げる。


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