投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 40 10年越しの約束 42 10年越しの約束の最後へ

10年越しの絆<前編>-4

「あと一年…」
宮木さんがボソッと呟いた言葉が、風に乗って俺の所に届く。
(一年って…なんだよ?)
やっぱり分からない。
けど、分からないから…霧消にイライラする。


「なぁに朝っぱらから、機嫌悪そうな顔してんだ?」
しばらく固まっていると、急に俺の視界に光輝が割り込んで来た。
ハッキリ言って、今、最も見たくない顔だ。
「桜見てたのか?」
「光輝には関係ないよ」
俺は光輝に背を向けて歩き出した。
けど、耳に届いた言葉に、つい足を止めて振り返ってしまう。

『あと一年…』そう聞こえた。いや、光輝は確かにそう言った。
宮木さんと同じ様に、桜を愛しそうに見つめながら……

これがただの偶然だとは思えない。偶然にしては、あまりにも似すぎている。
重なる二人の姿…実は二人が知り合いだったのではないかと疑ってしまう程だ。
でも、それは有り得ない。
光輝は先日、宮木さんの話題を振られて、気だるそうに『誰?』とか『興味ないな』とか言っていた。
それに宮木さんも、うちのクラスには来たことが無いし、光輝の話もしたことが無い。
もし本当に知り合いだったら…二人の一番近くにいる筈の俺が、気付かない訳がないじゃないか。


有り得ないとは思いつつも、二人の間に俺が知らない何らかの繋がりが有るのではないかと…そればかりが気になって仕方ない。
けど、なんとなく本人には確認する事が出来なくて、結局は水沢に訊いてみた。
水沢なら、何か知っている様な気がしたからだ。

「『あと一年』って…どういう意味だか、水沢は知ってる?」
そう唐突に質問すると、水沢は不審そうな視線を俺に向けた。
「ん?聖がそう言ったの?」
「そうなんだよね…ちょっと気になっちゃってさ!」
「ふぅん、気にねぇ……」
何かを探るかの様に俺を見つめるその瞳が、物凄く心地悪い。

しばらくして水沢は、視線をそのままに口を開いた。
「聖はさ、昔はよく入院してたんだよね。まぁ、今は平気らしいけど」
やっぱり水沢は、何かを知ってるらしい。
「そうなんだ…」
(入院か……ん?待てよ?)
「その時にね、出会った男の子と約束したんだって。『10年後にもう一度会おう』って…聖は今も、その約束を大切にしてるの。誰とも付き合おうとしないのも、その約束があるからみたい」
「へ、へぇ…」
「で、その約束が来年…らしいよ?」
(ま、さか…でも、そうだとしたら…全てつじつまが合う……)
俺の中で、抱えていた疑問が繋がった。

確か同じくらいの時期、光輝も何だかの病気で入院していた筈だ。
宮木さんが約束した相手が光輝だったら…光輝が宮木さんと同じ様に、その約束を今も大切にしているのなら…二人の姿が重なるのも、納得だった。
それに、その約束をまだ大切にしているということは、二人はまだお互いの存在に気付いていないんだろう。

このまま気付かないで欲しいと、心からそう願う。宮木さんを光輝に取られたくない。
宮木さんが俺を友達としか見ていないのは、よく分かっている。
でも今、宮木さんの一番近くにいる男は間違いなく俺だから…その場所だけは、どうしても奪われたくないんだ。


10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 40 10年越しの約束 42 10年越しの約束の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前