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『正夢』
【青春 恋愛小説】

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正夢〜真夏の夜の悪夢-1

極彩色の景色が周りに渦巻く。それを知覚するのに数瞬かかった。

得体の知れない不安。そして、その景色は今感じた俺の気持ちをあざ笑うように迫ってくる。

なんだ、なんなんだ……。

景色がぶつかる。その寸前に風景にヒビが入った。

そこには……恐ろしいものが……。


「うわぁッッ!!」


一瞬の浮遊感と一瞬の衝撃。自分がベッドから転がり落ちた事に気が付くのにさほど時間はかからなかった。




支度を済ませて家を出る。少し歩いていると、後ろから聞き慣れた声がした。


『翔ちゃん、おはよっ』
「ああ」


声の主は恵(けい)。一応俺の彼女だ。


『夏休み、楽しみだね〜』
「ああ」
『たくさん遊びに行こうね?』
「ああ」
『翔ちゃん、どうかしたの?』
「ああ」


相槌の連発。恵はなんとなく俺の心情を察したのか、これといって質問をしなかった。

今朝の夢が思い出せない。なにか、とんでもないものを見た気がするのに……。

しかし、五分程考えても思い出せなかったので、このことは頭の隅にしまうことにした。




学校へ着き自分の席に座る。今日は終業式と成績表を返されるだけなので、これといった用意はしてこなかった。

欠伸(あくび)を噛み殺しながら外の景色を眺めていると、目の前の席に誰かが座る。目をやると明らかに睡眠不足の感が否めない渉がそこにいた。


「眠そうだな」
『ああ……なんか夢見が悪くてな』
「俺もだ。奇遇だな」


話を聞くと、意外なことに渉も何かしらの悪夢を見て跳ね起きたクチらしい。

こういう時は、何故か沢山寝ていても一発でそれをひっくり返される。やはり精神状態と身体はリンクしているんだなと、珍しくまともなことを考えていた。


『みんな、体育館に集合だぞ。廊下に並べ』


入ってきた担任の言葉に従い、皆気だるそうに体育館へと向かう。

まぁ明日から夏休みだし、今年はパーっと遊ぼうかな。なんて考えていた。


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