投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 11 「とある日の保健室」 13 「とある日の保健室」の最後へ

「とある日の保健室その4」-3

「双葉先生〜……今日もお邪魔しま〜す……ふあぁぁ……」
阿呆みたいに大口を開け、保健室に到着して早々の開口一番、俺は言った。
「はいはい。まったく、いつになったら橘君のサボり癖は直るのかしら?」
双葉先生がいつもの笑みで俺に問う。俺は当たり前のように返した。
「卒業するまで」
「それじゃ留年しちゃうわよ」
「お休みなさ〜い……」
「人の話を聞きなさい!……って、もう寝てる……」



その寝顔を見て、私は思った。
(可愛い……)
まずは目を見た。 現在、閉じられている目は、開いている時、決まって眠たそうな目をしている。それも可愛いと思う。
次いで鼻、唇……そこで私の目は止まった。
(そうだ……この唇が……)
昨日、私の唇を奪おうとした。
双葉薫。
23歳。
キス経験……なし。
つまりはファーストキスを橘君に奪われるところだった……。
でも、それも悪くはなかった、と思う。
私はきっと……橘君の事が好きだ。
キスされそうになった時、して欲しかった。あの時にやっと気付いた。私が好きな人はこの人だって。
いつからだろう? いつから、生徒にこんな感情を抱くようになったんだろう。
それはきっと、毎日見ていた時から。日々成長していく橘君を見て、好きになってしまった。
いつしかそれは、触れてみたいという願望に変わった。その願いが叶うはずだったのに……。
(いいところで邪魔して……!)
星野優花。
彼女は橘君とキスした。しかも(見ただけだが、私には即座に分かった)ディープ。
もう一度よく見る。その男と言える、橘君の顔、唇……触れても、いいかな?
「すぅ……すぅ……」
規則的な寝息をしている橘君。それも可愛い。
とにかく、しばらく起きそうにない事は確かだ。触れるなら今しかない。
「…………」
高鳴る鼓動を感じながら、私は橘君の顔に手をやる。暖かい。
次いで、唇に手をやる。柔らかい……。
もう我慢出来ない!
「んむ……」
橘君の唇に、私のそれを当てた。橘君は少しも動かずに、私のキスを受け入れてくれている。
そうだ。舌だ。
舌を絡ませなきゃ。
そうしないと、負けた事になる。
あの女……星野優花に。
「ふ……ぅ……ん」
あぅ……すご……!
気持ちいい……ずっとこのままがいい……。だけど、私とあなたは教師と生徒。これは叶わない恋なんだ。
だから、今だけ……。
「ぷはっ……はあ、ぅん……橘君……」
唇を放す。またすぐに触れ合わせたいけど、想いを伝えなきゃ……。
「橘君の事……好きなの!私、本気になっちゃったの!橘君の事……大好きなの!んむぅ!」
またディープキス。
分かっていた。返事なんか返ってこない。橘君は寝ているんだもん。
それでも私は、この想いを口にしたかった。口にする事で、この罪が消え去るような……そんな気がした。
私の罪は、寝ている生徒と淫らな行為に及んだ事……。でもそこに゛愛″があるなら…… それすら許される気がする。
たとえそれが、一方的な愛だとしても。
「なに、やってるんですか……?」


「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 11 「とある日の保健室」 13 「とある日の保健室」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前