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「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

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「とある日の保健室その4」-2

「あ、どこ行くの?」
優花が訊きつつ近寄る。うざってえ。
「帰るんだよ。もうホームルームも終わったみたいだしな」
「じゃあ、私も一緒に」
「嫌だね。俺は1人で帰るんだ」
「そんなつれない事、言わないでよ……」
キレた。
完全にキレた。
俺はキレたぞ!
「うるさい!俺に近寄るな!だいたいなんだ!お前はなんだ!俺にどうして欲しいんだ!退学か?学校に来て欲しくないのか?それはつまり顔を合わせたくないんだろ!?嫌いなんだろ!?だったら、俺に思わせぶりな事を言うんじゃねえ!それともなにか?それすら作戦か、俺を陥れる為の?」
一気にまくしたてた。
思い付く限りの文句を言ってやったおかげか、すっきりした。ただ、双葉先生を驚かせてしまったようだな。目を白黒させて慌てふためいている。
「……別にそういうわけじゃなくて……私は達也を……」
顔を俯けた優花は、ぼそぼそとなにを言っているのか分からない。それとも泣いているのか。言い過ぎた……とは思うまい。少しくらいは思うかもしれんが。
と、突然奴は顔を上げ、
「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!達也の馬鹿ぁ!」
俺をけなして保健室から去って行った。
くそ、俺もなにか言い返せば良かったかも。不完全燃焼だ。
「いいの?星野さん、泣いてたようだけど……」
双葉先生が心配そうに俺に訴えた。 俺は優しく言ってやる。
「大丈夫ですよ。だいたい、俺はあいつの彼氏じゃありませんし」
「……橘君がそう言うならね……」
「じゃ、また明日来ます、休みに」
「もう……たまには授業にも出なさいよ」



まだ日は高い。
夏らしい気温だ、 目茶苦茶暑い。
俺は今、家への近道ルートを通っている。俺の家は高校からそんなに離れていない。徒歩で15分くらいか。
近道ルートは商店街を通る。その帰り道にいろいろ買ったりもする。主に食品だな。
実は俺は1人暮らしだ。両親はともに全国を転々としている。俺が両親について行かなかったのは、ここが拠点だからだそうだ。その為の番……それが俺だ。そんな俺の両親の職業は……あまり他人には言いたくないので、ここでは伏せておこう。
さて、ここまで説明すると、俺が普段から購入する物がインスタントに思われがちだが、それは違う。俺だって自炊ぐらいする。そりゃ、疲れた時はインスタントで済ませる時もあるが。そして今日は疲れた日だがな。



「ただいま〜……つっても、家には 誰もいねえ……」
寂しい独り言を漏らしつつ、俺は玄関のドアの鍵を開ける。
やはり暑いな。閉めっ放しだもんな。エアコンがあるにはあるが、点けっ放しは電気代がな。
「湯、沸かすか」
鞄を居間に放り出し、風呂とやかんの水を沸かす。ついでにエアコンを点けた。
先にやかんの方が沸いたみたいだ、悲鳴をあげている。
「っと……」
インスタントラーメン……カップ麺に湯を注ぎ、待つ事3分。あっという間だ。
蓋を開き、箸を手に取る。
「いただきます」
両手を合わせ、定番の挨拶をしてから、俺は麺を啜った。熱いが、エアコンのおかげか、少しはマシだった。
「ふぅ……風呂入って宿題やって……寝るか」
空になったカップ麺を片付ける。
今夜は疲れてしまった。さっさと寝たいところだが、宿題はせねばならん。とは言っても、授業には出ないがな。変なところで真面目だな、俺って。


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