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「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

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「とある日の保健室その4」-1

う〜……ここはどこだ……?
柔らかい……毛布か?俺はベッドに横になっているのか?
身体がだるい。
動きたくない。
それから……さっきまでなにかを求めていたような気がするんだが、今となってはそれがなんなのか、さっぱり分からなくなっている。
記憶喪失?
俺は誰だ。橘達也だ。
ここはどこだ。……保健室かな。
さっきまでなにをやっていた。……分からない。
「あ、橘君……。目……覚めた……?」
双葉先生だ。てことは、俺はさっきまで寝ていたのか。
身体がだるいのが気になるが、まあいい。とりあえず起き上がる。
「おふぁようございま〜す……」
大口を開けて欠伸をした。重い瞼を擦って無理やりにでも軽くする。眠い。
「橘、君……もう帰りのホームルーム、終わって、ると思うよ……?」
あれ?なんか双葉先生が変だ。
赤面して、俺と目を合わそうとしない。顔を背けている。
「双葉先生?」
「な!……にかな?」
「……?なにかあったんですか?」
「ないないない!なんにもないよ!別に橘君が私を襲おうとしたとか、そういう事は全然ないよ!」
「え……」
「あ……」
襲おうとした?
俺が?
先生を?
……言われてみれば、そんな事をしたような気がしてきた。
そうだ。先生の顔に触れて、それから……誰かの唇が、俺のそれを塞いで……誰かって誰だ?
いや、それよりもまず、双葉先生に謝らねば。
「すいませんでした!俺……あの時、動悸が激しくなって、訳分かんなくなって、それで……」
「い、いいのよ。未遂で終わったし……」
その言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした、
「そうですか……未遂で良かったぁ……」
のも束の間。
「未遂じゃないし、ちっとも良くない」
優花が鞄を持ち、膨れっ面で保健室の戸に背中を預けて立っていた。
「どういう、事だ?」
だいたい察しはついていた。キスの件だろう。
誰かが俺の唇を塞いだ。誰かとはおそらく、優花の事なのかもしれない……。
案の定、優花は俺に詰め寄った。
「あんたの興奮を抑える為に、私が身体を張ったって事よ!」
「興奮……確かにあの時、妙におかしかったが……」
「あれは興奮剤のせいなの!私の作った弁当に入ってたの!」
「は?……ちょっと待て」
十中八九間違いなく、こいつが興奮剤を入れたのだろう。
という事は……
「身体を張った、てのは、自業自得じゃねえか」
「うう、うるさい!」
「にしても……なんで興奮剤なんか……」
「それは……」
そしてそいつは言いやがった。いけしゃあしゃあと。
「既成事実を作ろうかと思って」
既成事実(俺が優花を強姦する)だとぉ!?ふざけんな!つうか、最初から身体を張るつもりだったんじゃねえか!
「悪かったわよ……そんなに怒らないでってば」
怒るなと言われて、おとなしくなれるものか。
「お前……まだ俺を退学にする事、諦めてなかったのか……?」
怒りを露わにして、俺は言い放った。
だがしかし、
「うん。そだよ」
奴は短く答えやがった。
先生の手前、あまりうるさくしたくないし(それでも限界は近かったが)、もう帰ろうか。


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