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「消えぬクリスタルハート」
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「消えぬクリスタルハート」-2

依頼の品を慎重に慎重を重ねて荷台に積み込む。
そして二人で依頼先へと、車を走らした。

ゆらゆら揺れる車から見る景色は、物凄い勢いで横に飛んでいく。
その反対には、同じ景色を背景に運転をしている友人が居る。
「どうしたもんかな」
前を注意しながら呟く、それは独り言のようだ。
「原因は、その噛み合わない事だろ?」
「…うん」
さっきとは打って変わって真面目に言葉を紡ぐ友。
なんだか緊張する。
「その原因の原因は、忙しい事だろ?仕事が」
「…たぶん」
「なら、仕事が悪いって印象があるだろうな、だったらそれを壊さにゃならん」

「壊す?」
友はこちらを向き、笑って言った。
「相手に『これなら会えないのもしょうがない』って思わせるのよ。簡単に言いや『この仕事はお前と会うくらいに大事なもの、素晴らしいもの』だって」
「…そこ」
「おっと!」
危うく、目的地を通り過ぎるところだった。
ブレーキをかけ、停止させる。
(この仕事が素晴らしいものだって分かってもらうには…どうしたら…)
そんな事を考えながら荷物を下ろす。
依頼先は街の硝子工芸屋、窓ガラスから硝子の工芸品まで様々な商品を扱うお得意先。
見習いの彼達の作品でさえ扱ってくれる優しいお店。

(まぁ、扱ってくれても売れないんだけどね)
未だ、店の前に彼が作った風鈴が売られている。
それを見て、友はわざとらしく言った。
「なんだ、しぶとく生き残ってたのか?俺のはさっさと死んじまったのに、羨ましいヤツめ」
「おい」
思わず声が低くなる。
だが、友はその声に反応せず、風鈴を見ながら彼に語りかけるように言った。
「『気持ちだけは…誰にも負けない』のにな」
「…あ」
分かった。
彼女に伝える方法が。
彼女を想う彼だけの気持ちを、彼だけの方法での伝え方が。
(気付いたか)
友は横目で、何かを思い付いた彼を見て、微笑んだ。

(全部教えたんじゃ意味ないからな。お前が気付かなきゃ意味がないだろ?)
そう心の中で呟いてから。
「おら、さっさと帰るぞ!なんならその風鈴自分で買え!」
「な、なにぃ!?」
そう言って、二人車に乗り込み、帰路を走り出す。

 その間、彼はある考えを一人で何度も思案していた。
(プレゼントをあげよう!硝子で作った、何かを)
徐々に希望の光が強くなるのを感じる。
(何がいいだろう。とにかく、自分の気持ちを表せる何かを…)

余談だが、この後の仕事に集中できず、親父に怒鳴られた彼であった。


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