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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの関係-3

「松田君って、光輝君と仲悪いの?」
私の言葉に、松田君の表情が一瞬にして固まる。この場の空気すら、一気にピシッと音を立てて氷ついた様な気がする。
「ね、ねぇ…松田君……」
「なに?」
松田君が無理に笑顔を作って私の方へと顔を向ける。その表情が、なんだか痛々しい。
「えぇっとぉ…」
(私…マズいこと訊いちゃった?)

「………ハッキリ言わないと分からない?」
松田君はしばらく私をジッと見つめた後、瞳を曇らせて苦笑した。
「分からないから訊いたのか…宮木さん、鈍感だもんね?」
「ごめん…なさい……」
なんだか申し訳ない気分になってしまう。
二人の間の確執の様なものを感じていたのに、私は何の考えも無しにその話題を振った。
とても無神経に…

しばらくうつむいていると、松田君の言葉が耳に届いた。ゆっくりと…重く語られる言葉が……
「宮木さんってさぁ、光輝の事ばっかりだよね?少しは…周りを見たことある?皆の…気持ち…とか……」
「……ぇ?」
いつか絢音に言われた言葉…あまりにも酷似しているその内容に、デジャヴにも似た感覚に襲われる。
「考えたこと…ある?俺が…どうしていつも宮木さんの側に居るか…とか……」
(松田君…それってどういう……)
「考えたこと…無いよね?だからこそ、平気な顔をしてそんな残酷なこと訊けるんだよね?宮木さんのその鈍感さ…たまに憎いよ……」
松田君はガタンと椅子から立ち上がると、苦しそうに顔を歪めて私の前から去っていく。
鉛の様に体が重くて、私はその様子をじっと見ているしか出来ない。『ごめん』の一言さえ言うことが出来ないの。
私が松田君にそんな表情をさせているんだって、ちゃんと分かっているのに…


「どうした、聖?浮かない顔して…」
不意に、頭の上に温かい重み…顔を上げると、そこには光輝君の柔らかい笑みがあった。
「普通クラスの校舎、久々に来たよ。やっぱ、こっちは良いな!」
「光輝…君……」
「そういえば、博也はどうしたんだ?せっかく邪魔してやろうと思って来たのに…」
「ま…つだ…くん…は……」
「ん?」
光輝君が不思議そうに首を傾げる。
「わ、たし…悪いこと…訊いちゃって……」
目の前が真っ暗で、光輝君の顔がまともに見れない。
光輝君がこうやって来てくれたのに、今の私は松田君への罪悪感でいっぱいなの。
だって私…松田君の一言一句を思い出して、頭の中でもう何度も『ごめんなさい』と言っている。
申し訳なくて堪らないの。


「ふぅん…放っとけば?」
事の経緯を説明すると、光輝君は特に興味が無さそうにそう言った。
もうちょっと…親身になってくれても良さそうなのに……
「そんなこと…出来ないよ……」
「なんで?」
「だって…すごく傷付いた顔…してたし……」
私は本気で悩んでるのに…光輝君は長い溜め息を吐いた後、あろう事か『やっぱりガキだな』と呟いた。


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