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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの関係-2

「ふぅん…」
「な゛…なに?」
(か、顔近いよっ!)
「何かあったんだぁ?もしかして、告白された?それとも、告白しちゃったの?」
「そ、そんなんじゃないってばっ!」
「じゃぁ、な〜に?」
「う゛…」
口籠る私に、絢音は追い討ちをかける様に『教えないと勝手に想像しちゃうよ?』などと言っている。
私としては、ちょっと厳しい状況…これは素直に教えるしかないかもしれないな。

「あのね、………たの。」
「ん?何?」
恥ずかしい思いをしながらも、やっと言ったのに…聞き取れなかったのか、絢音は不思議そうに首を傾げている。
「だから…キスされたのっ!」
「はあぁっ!?うそっ!?」
今度はちゃんと聞こえたらしく、目を丸くして叫んだ後、開いたままの口を両手でパッと押さえた。
通りを歩く人々が、いかにも不審そうに絢音を振り返っていく。

「せ、瀬沼ったら…そんなに焦る必要ないとか言ってたのに……」
周囲の痛い視線にも気付かず、絢音は目を見開いたままでブツブツ呟いている。
その様子はまるで、考えてる事を無意識のうちに言ってしまっているかの様…
(ん?“瀬沼”って…そういえば光輝君も、絢音のこと“水沢”って……)
何かが胸の奥に引っ掛かる。

「ねぇ、絢音…いつの間に光輝君と知り合いになってたの?」
私は思い切って訊いてみた。そんなに深く考える事じゃないと思ったから…
でも絢音は私の予想に反して、少し動揺したかの様に視線を右へ左へと動かした。
「え、えぇっと…実は前から知り合いで……って、そんな事どうでも良いじゃないっ!あっ、お店に到着したね!さぁ、アイスアイス〜っと!」
やっぱり何かが引っ掛かる。
絢音は明らかに動揺している。
しかも今、あからさまに話題を変えた。
(何だろう?この感じ…気持ち悪い……)
無理にはしゃいでいる様にも見える絢音を横目で見ながら、私は心の中にポツポツと黒い染みが付くのを感じていた。


翌日…あまりにもいつも通りの放課後に、私は少し驚いた。
特に変わった様子も無く、今日も私は、松田君と一緒に委員会の仕事をしている。
変わっているとすれば…私の溜め息が無くなった事くらいかな?

「そろそろ集まりを一度開いた方が良さそうだね?他の委員にも手伝って欲しいこと有るし…どうだろう?」
「うん。良いと思う。」
「あっ、宮木さん…また聞いてなかったでしょ?」
「はぁっ!?きょ、今日はマジメに聞いてるよっ!」
「今日“は”?」
「い、いつも…」
「いつも…聞いてなかったよねぇ?」
(う゛…)
「そ、そんなこと無いもんっ!」
松田君は『そうだっけ?』などと言いながら、ケラケラと面白そうに笑っている。
私は全然面白くないんだけど…なんだか今日は、意地悪く私をからかう松田君を見てると妙に安心してしまう。ホッとするというか、落ち着くというか…
だから気が緩んで、ついつい私は訊いてしまったの。あまり深く考えずに…一番訊いてはいけないことを……


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