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シスコン
【コメディ 恋愛小説】

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シスコン『第九章』-8

「五本目。入れたら勝ち、外したら、オレが入れるぜ?」
秋冬が言った。
澄は確信を持っていた。秋冬は次の五本目、必ず成功させるだろう。
四世秋冬という人間は天才なんだと、改めて思う。
コツを得れば、きっとなんでもできるのだろう。澄は秋冬に対しそんな事まで考えた。
後ろからのプレッシャーが尋常じゃない。体育のときなんかの比じゃない。もっと刺すような、凍て付いた、氷のプレッシャーだ。
この五本目、入れなければ負ける。この五本目を入れたら、秋冬はもちろん入れてくるであろうから、
ルール上、サドンデスに突入となる。


―――背中が変な汗かいてやがる…!


感じた事のない重圧。ボールを持つ手が、ボールから離れそうにない。
澄はリングを見た。
遠い。あまりにも。
澄は構えた。
「なにしてるのよ二人とも!!!」
梓の声も、耳には入ってこなかった。
ボールが、指から離れた。




ガンッ




「くそっ!!!」
タンタン…と、ボールは無情にもリングを通らず、少し遠くの床を跳ねる。
「五本目。」
その声に、澄はビクッとした。
「遠いだろ?お前はこの一本を外したから、また五本連続で入れなきゃいけない。あと一本しか外せない。オレはどうだ?これを外しても、次入れればいい。…作山、お前の負けだ。最初から、決まってた。」
秋冬は構えた。綺麗なフォーム。
「ゲームセットだ。」


シュッ……パスッ


秋冬の勝利が、決まった。
「…嫉妬、したんだ。お前に。」
澄がつぶやいた。
「そんで、いらいらした。」
澄は梓を見て、フッと笑った。
「オレの欲しかったもん持ってるくせに、まだ他に望むお前を見てて、むかついた。」
梓はしきりに体育館の入口を見ている。
「梓ちゃんの前で言いたくねぇけど、お前の思った通りだ。」
秋冬はボールを持った。澄は床に座った。
「オレ、優魅ちゃんの事、結構前から好きなんだ。」
梓は澄を睨んだ。
「だからって人の仲を引き裂いていいの!?」
「いいんだ。」
秋冬が言った。
「作山は、浜崎さんの事を思って、勝負を吹っ掛けたんだから。」
秋冬はシュートした。ボールはリングにぶつかる。
「オレが悪いんだよ。オレが、中途半端だから、みんなを傷つけるんだ。」
澄は鼻で笑った。
「行けよ。」
「…は?」
「四世姉んとこ行けよ!報われねぇ思い抱えてろよ!そしたら、傷つくのはお前だけになるだろう…?」
秋冬は梓を見た。梓は困った顔をした。
「…ごめん。」
秋冬は走り出した。体育館を出ようとしたとき、優魅を前方に見つけた。すれ違おうとする二人。秋冬が優魅の横を通り過ぎようとしたときに、優魅がつぶやいた。
「別れよ。」
秋冬は一瞬止まった。
「…うん。」
秋冬はまた走り出した。


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