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Happy Birthday
【家族 その他小説】

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Happy Birthday-7

―貴之6歳。
小学校入学。
小さかった貴之がもう小学生。
月日が経つのは本当に早い。
これからますます貴司の世界が広がっていく。
それが、嬉しいような、寂しいような…。―


次第に『母さん』の周りが騒がしくなってきた。
いよいよ、赤ちゃんが産まれるみたいだ。
『母さん』が分娩室に入っていく。
僕もついていこうとしたら、ドアの前で看護婦さんに止められた。
「お母さん、これから頑張って赤ちゃん産んでくるから、お兄ちゃんはここで待っててね。」
…'お兄ちゃん'!?
そうか、他の人から見たら僕は『母さん』の子どもで、赤ちゃんのお兄ちゃんに見えるのか…。
でもね、違うんだ。
これから産まれてくるのは、『僕』。
『僕』がもうすぐ産まれるんだ!!
なんて、そんなこと言ってもわかってもらえるわけないから、僕は黙って廊下で待つことにした。
そういえば、去年の誕生日に僕が産まれたときのことを母さんが話してくれた。
父さんは仕事が忙しくて、病院にこられなかった言ってたっけ…。
大きい赤ちゃんだったから、産むのが大変だったとも言ってた。
産まれるときから、母さんに苦労ばっかりかけたのよ…って、冗談混じりに言われたんだ。
その時は、産むってだけで大袈裟だなって思ったけど、今ならわかる。
僕は産まれるときから、母さんに苦労かけてたんだ。
なんだか、申し訳ない気分になる。
今の僕には、ただ祈ることしか出来ない。
無事に産まれてくることは、僕が今ここにこうしていることが何よりの証明だけど、それでも落ち着かない。
'早く産まれてこい!!'
『母さん』のお腹にいる自分に、語りかける。
'『母さん』はお前のことを本当に愛してくれてるんだ。
少しでも早く、楽にしてやれよ…。'


―貴之7歳。
家族で遊園地。
貴之はジェットコースターとか、絶叫マシーンがお気に入り。
私は苦手なのに…。
あんなのの一体どこが楽しいの!?―


「貴之くん、見て。」
産まれたての赤ちゃんを、『母さん』が僕に見せてくれた。
小さい……。
ベッド―透明なプラスチック容器みたい―の上で、眠っている。
赤ちゃんのほっぺに触ってみる。
柔らかい…。
「ずっと傍についていてくれて、ありがとう。」
突然『母さん』にお礼を言われて焦る。
「もう遅いし、貴之くんのお母さんも心配してるんじゃないかしら??お家に電話した??」
心配…。
母さんは僕がいなくなって心配してるかな??
でも今目の前にいる『母さん』だったら、心配してくれてるんだろうな。
だから、きっと母さんも心配してくれてるはず。
「僕、そろそろ帰るよ。」
なんだか無償に母さんに会いたくなった。
'子どもだ'と思われてもいい。
僕は今、母さんに会いたいんだ。
そして、僕が産まれたときのことをいろいろ聞いてみたい。
母さんがどんなことを思っていたのか…とか。
「そうね。遅いけど、一人で大丈夫??」
『母さん』が心配そうに尋ねてくる。
「大丈夫!!」
僕はそう答えると、勢い良く病室を飛び出した。
向かったのは、河原。
ここに座ってたら過去に来ちゃったんだから、戻るときもここにくればいいのかな??って、何となく思ったんだ。
来たときと同じように河原に座り、立てた膝に顔を埋めた。
今は我慢しなくても、涙は流れてこない。
逆に、気を緩めるとなぜだか笑顔になってしまう。
…『母さん』幸せそうだったなぁ〜。
…『無事に産まれてきてくれるだけで、子どもはみんな'いい子'』って言ってた。
今の母さんも同じなのかな??

…気づくとそのまま眠ってしまっていた。


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