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Happy Birthday
【家族 その他小説】

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Happy Birthday-1

あなたが産まれたとき、自分が世界中で一番幸せだと思ったの…。
本当よ…。
『産まれてきてくれて、ありがとう。』



僕の名前は'櫻井 貴之'。
小学3年生。
勉強はあんまり好きじゃないけど、走るのは得意!!
風を切って走ってると、体が風に溶けていくみたい。
風と一つになったときって、すっごく気持ちいいんだ。
僕が本気で走ったら、同じクラスの奴なんか絶対追いつけない。
6年生にも勝ったことがあるんだから。
運動会のリレーでは、必ずアンカー。
みんなが僕のこと頼りにしてるんだよね。
…それなのに、母さんは
「走り回ってばっかりいないで、少しは勉強しなさい!!」
ってうるさいんだ。
机に向かって座ってるなんて、授業だけで十分だよ。
家に帰ってきてまで、やってらんない。

ある日曜日、友達と遊びに行こうとすると母さんの声が…。
「貴之!!宿題は!?」
あ〜ぁ、また始まった。
母さんの「宿題は!?」が。
うんざりしながら、
「帰ってからやる。」
って答えると、いつもは
「まったく…。」
って言いながらも行かせてくれるのに、今日は違った。
機嫌が悪かったのか、玄関までくると僕にお説教を始めた。
「だいたいあんたはどうして、ジッとしていられないの??いつも、いつも走り回ってばっかりで…。」
はぁ〜。
これは長くなりそう…。
こうなった母さんは、なかなか止まらないんだ。
この間も1時間も正座させられて、足が痺れて大変だった。
こんなことに時間をかけてないで、もっと他にしなきゃいけないことないのかな??
きっと母さんの趣味は、僕に説教することなんだ。
「…ちょっと、貴之!!聞いてるの!?」
はぁ〜。
もううんざりだよ。
そうだ!!
母さんが話に夢中になってるうちに、逃げ出しちゃえ!!


―19XX.11.14。
貴之誕生。
元気な男の子。
私はこれからこの子と、どんな日々を過ごしていくのだろう??―


お昼ご飯を食べるため、友達と別れて家に帰った。
もちろん、ご飯食べたらまた遊ぶ約束もしてある。
「ただいま〜。」
玄関に入ると、なぜか違和感が…。
なんだろう…??
何かが足りない気がする。
…あっ!!
スパイクだ!!
僕が一番気に入ってる、サッカーのスパイクがない!!
「母さん!?母さん!!」
あのスパイクを僕がどれだけ大事にしてたか、母さんはちゃんと知ってるハズ。
でも、「まさか!?」って考えが頭の中を駆け巡る。
もつれる足を必死に動かして、キッチンに駆け込み、母さんの背中に恐る恐る声をかけた。
「ねぇ、僕のスパイク知らない??」
そんなはずないって否定しながらも、最悪の結果が迫ってる感じがする。
「この前、小さくなったって言ってたじゃない。だから……って、そんなことより、貴之!!さっきは何で話の途中でいなくなったりしたの!?だいたい、あんたはいつも…」
途中から頭が真っ白になった。
母さんが話し続けてるのに、言葉が頭の中に入ってこない…。
よく漫画とかで、頭が真っ白になるって書いてあるけど、こういうことなんだ。
本当になにも考えられない。

『バン!!』

気が付いたら、家を飛び出してた。


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