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Happy Birthday
【家族 その他小説】

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Happy Birthday-6

―貴之5歳。
運動会の紅白対抗リレーでアンカーを務める。
運動神経だけはいいみたい。
一体、誰に似たんだか…。―


病院に着けば、すぐに赤ちゃんが産まれるもんだと思ってたけど、違うんだ。
『母さん』が通されたのは、普通のベットの上。
ここで産むの??って思ったけど、違うらしい。
赤ちゃんは'分娩室'ってところで産むんだって。
看護婦さんが教えてくれた。
じゃあ、どうして『母さん』は、その分娩室ってところに行かないんだろう??
それも看護婦さんに聞いたけど、その答えに僕は驚いた。
「分娩室に入るのは、まだまだ。もっと陣痛の間隔が短くなってからじゃないと。丸1日かかる人もいるのよ。」
丸1日!?
そんなに長い間、『母さん』は苦しまなきゃいけないの??
こんなに辛そうなのに!?
こんな『母さん』もう見てられない!!
気づくと周りを気にせず叫んでいた。
「赤ちゃん産むの止めちゃいなよ!!」
そんなことできっこないってわかってるけど、言わずにはいられない。
だって、『母さん』がすっごく苦しんでるんだもん。
「そんなに痛い思いして産んでも、母さんの言うことなんか聞かないで、走り回ってばっかりの子が産まれるんだよ!!いい子になんかならなくて、母さんは怒ってばっかりで、楽しいことなんて一つもないんだよ!!」
辛そうな『母さん』を見ているのが嫌で、一気にまくしたてした。
『母さん』が驚いた顔をしている。
「…ふふふっ。まるで、この子が大きくなったところを見てきたみたいに言うのね。」
しまった!!
思わず、熱くなって余計なこと言っちゃった。
「イヤ…あの…そんな子になっちゃったら、こんなに辛い思いしてるのに、母さ…じゃなくて、お姉さんが可哀想だなって思って…。」
しどろもどろになりながら、必死に弁解する。
僕が、今『母さん』のお腹の中にいる赤ちゃんだって言っても、信じてもらえるわけないもんね。
それどころか、変な子だと思われちゃう。
「…でも、そうね。もし、この子が貴之くんの言うように、あたしの言うこと聞かないで、走り回ってばっかりいる子になったとしても、絶対に産むのを止めたりしないわ。」
きっぱりと言い切られた。
ここまで言い切れるのはどうしてだろう??
「お母さんの言うことを聞く子が'いい子'ってわけじゃないのよ。私の言うことを聞いてもらいたいから、赤ちゃんを産むわけじゃない。それに'いい子'って言うなら、無事に産まれてきてくれるだけで、子どもはみんな'いい子'なの。それだけで、お母さんはみんな嬉しいのよ。」
'そんなことない!!'って言いたかったけど、『母さん』の顔を見ていたら何も言えなくなった。
だって、本当にそう思ってるのが伝わってきたから。
でも、僕が知ってる母さんは、毎日怒ってばっかりだ。
「走り回ってないで、勉強しなさい!!」が口癖で…。
どうして変わっちゃったんだろう…。
僕、こっちの『母さん』の方が好きなのに…。


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