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終わりの合図と見知らぬ唄と
【青春 恋愛小説】

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『忘難き時間と知った歌と 前編』-3

「さぁなに歌おっかなぁ♪」
青木君はもぅ本を手に取って曲を選んでいた。 藤原君はとても上手なのは知ってるけどやっぱり青木君も千秋チャンもうまいのかなぁ…?
「千秋チャンはカラオケって良くくるの?」
「あっ、やっと自分から質問してくれたー♪
そうだなぁ、あんまり得意ではないけどちょくちょく来るよ。 葵チャンは?」
「私? 私は…小学生以来かなぁ… 実は自信ないんだ…やっぱり唄わなきゃダメかな?」
「「そりゃそうだよ!!」」
青木君も入ってきて完全にハモった声で返す。 幼馴染みって恐ろしい。
「カラオケは歌うたう所でしょ? だったら唄わなきゃ!」
…でも唄えないよ…
「こらこら柳サンが困ってるじゃん。
無理にとは言わないから。 知ってる歌があったら一緒に歌ってもいいし。 ようは楽しく…ね♪」
藤原君が絶妙のタイミングで救いの手をさしのべてくれる。 こんな優しい所が…好きなんだ。
横から千秋チャンに、にやけ顔でつつかれてるけど…まぁいいや。 好きなんだもん…
そうこうしてる内に曲が流れ出す。トップバッターはやっぱり青木君。
「一番!シンゴ!唄います!曲は『赤燈』で」
ゆったりとしたテンポで流れるメロディ。 私の知らない曲だ。
「あれね、ACIDMANって言うグループの歌なんだけど、シンゴの十八番なの。 めったに唄わないだけど、どうしちゃったのかな?」
口元を緩めながら聞いてくる千秋チャン。 なんかおかしそう

『赤いレンガをそっと積上げて もぅ一度魔法かけてみる 幼さゆえの過ちなら これで消える…』
スローなテンポに妙にマッチした哲学的な詩は青木君の歌唱力もあいまってすごいいい曲に想えた。
やっぱり青木君も歌がうまい。
「いやぁ気持ち良かったぁ。ひさびさに唄ったなぁコレ! さぁ何点だ?」
画面では小さなキャラがかわいく動いている。
「ぷっ!! 78点…期待させんなよ」
「まぁでだしにしてはまずまずだな。 ってか次お前唄えよ! 葵チャンが期待してんぞ?」
「わかったって」
てばやくリモコンをあやつる藤原君。
やった!藤原君の歌をゆっくり聞けるチャンスだ。
それにしても青木君で78点かぁ… 難しいんだな、カラオケって

『週間の大道りに黒猫が歩く ご自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と…』
いきなり曲が流れ出しそのまま唄いだす藤原君。
『…走った 走った 生まれて始めての 優しさが 温もりがまだ信じられなくて…』
どうやらいじめられてる猫の唄みたいだ。 なにか私に似ている感じがする詞に私はいつのまにか引き込まれていった。
『…手紙を読んだ恋人はもう 動かない猫の名にアルファベット一つ加えて庭にうめてやった 聖なる騎士をうめてやった…』
すごい… かなしい歌…
でもなんだか引き込まれる。 私とダブってしかたない。
「っ!! 91点か…まずまずだな」
「なぁにがまずまずだよ! バンプ完璧に唄いきりやがって!バケモノかよ!」
バ…ンプ?
「ははっ。 いつもの事じゃんマコトは。 バンプ好きだもんねぇ?」
千秋チャンも知ってるみたい… あとで聞いてみよぅ。
次の曲が流れ出す。


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