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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの手紙-4

あれから10年…高校3年生になった俺は、今もちゃんと生き続けている。
10年前の手術は奇跡的に成功して、あれから病気が再発する事は無い。
あの時書いた両親への遺書は、手術後に俺が目を覚ました時に父親が破いて捨てた。喜びの涙を流しながら『こんな縁起でもない物を書くんじゃない』って…
でも、ヒジリに宛てた手紙は今でも手元に残っている。
『友達になってくれてありがとう。ヒジリが大好きだよ。』
もっと伝えたい事が色々有った筈なのに、これだけしか書けなかった。これだけて精一杯だった。
10年の間で色褪せてしまった手紙は、読む度俺にあの時の想いを蘇らさせる。ヒジリに会いたくて会いたくて…堪らなかったあの時の想いを……


桜の花を眺めたまま、どれくらいの時間が過ぎたのか分からない。気が付くと、太陽は西に傾いていた。
「コウキ君っ!」
不意に名前を呼ばれて振り返ると、目を泣き腫らした女の子がそこに立っていた。
風に乗った花びらが彼女を彩る。
「………ヒジリ?」
自信は無かった。でも、返事の代わりに彼女の瞳から涙が溢れて確信した。
(あぁ、やっぱり…来てくれたんだ……)
やっと会えたヒジリは、髪を風に揺らしながら俺をジッと見つめている。
物凄く嬉しくて、この気持ちをどう伝えたら良いのか解らない。

「「会いたかった。」」

無意識の内に口から出ていた言葉が、ヒジリの言葉と重なった。
今まで泣いていたヒジリがふわっと微笑む。夢にまで見たその笑顔は、昔と全然変わってなかった。
(神様…ありがとう……)


10年前に途切れた筈の2人の時間が、満開の桜の下で再び一緒になって動き出す。そして、途切れる事無く続いて行く。
桜の花に見守られながら…ずっと……


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