dream・road〜last dreamer-18
アレン!アレン!
白いガウンを羽織るその男は、軽やかにリングへと上がると、ガウンを脱ぎ捨てる。現れたのは、鮮やかな金の短髪を持つ男。
「三年ぶりか……」
『あぁ。早いな』
二人はリングの中央で向かい合いながら不敵に笑い合う。
「なあ、カイ」
『何だ』
「俺はあの時よりも強くなったぜ?」
『…俺もだ』
片や、一度は引退したものの、見事にカムバックを果たした男。カイ・オーウェンこと、アレン《ライトニング》ゴールドバーグ。
片や、三年前に《死神》と呼ばれたダミアン・ロペスを倒した男。《摩天楼のサムライ》御堂龍矢。
お互いがコーナーに戻る。凍矢はその大きな瞳を必死に開いて龍矢を見つめていた。
『ファイッッ!!』
レフェリーの声とゴングの音が重なる。
「行けぇ!タツヤァ!」
「頑張れパパァ!」
マリアと凍矢の声が響く。龍矢もカイも、同時にお互いに突っ込んだ。
両者の腕が振り上がる、そして……。
更に数年の時が流れた。
「じゃあ言ってくるよ母さん、グランパ!」
「おう、頑張ってこい」
少年は、元気にダニーのカフェの扉を開けて、大通りへと飛び出していった。
「マリア、いいのか?」
「ん?何が?」
ダニーは皿を洗いながら、マリアに声を掛けた。
「ボクシングはやらせないんじゃなかったのか?」
「んー……」
マリアも皿洗いを手伝う。昔はあどけなさの残る新人のバックダンサーだった彼女も、今ではトップスターの一人に数えられている。
有名になった彼女だが、時間が空いた時は今でもダニーの店の手伝いを続けている。
「しょうがないよ。彼に憧れちゃってるんだから」
「そういや、アイツ今日はどうしたんだ?」
「今日はユリアの父兄参観に行ってるよ」
「似合わないな」
「だね、ふふっ」
一通り皿を洗い終えると、マリアは午後の稽古のためにシアターへと向かった。