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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ11-1

「すまんかったな、瞬」
『ああ、別にいいよ』
「はは……」
灰慈は、由貴に告白したあと、すぐに瞬に電話して謝ったのだった。
『それにしても、由貴のやつ、やるな』
「めっちゃ驚いたで、高田を一蹴。それに由貴ちゃん、めっちゃ泣き顔が可愛グハァッ!!」
『………』
無論、灰慈は後ろにいたであろう由貴から、高田のように一蹴されたのだろう。
「はぁ…はぁ……あ、瞬、そんなわけで、灰慈くんと付き合うことにしたわ」
『……そうか、頑張れな』
「………うん」


電話を切る。

四人は予想外の組み合わせだったが、それぞれカップルになった。
『そろそろ俺も、けじめをつけなきゃな』
しかしその為には、記憶をたどる必要がある。
俺と悦乃が昔に出会っていることはもう確実だろう。

でも…いつ、どこで…


翌日、瞬は大学の廊下を一人で歩いていた。
前方から教材を大量に積んだ台車が向かってきている。
『………ん』
着信に気付き、上着のポケットからケータイを取り出し開いた。
『……悦乃からか』

危ない!

そんな叫び声が聞こえたと思った瞬間、瞬は強い衝撃に襲われた。
『っぐ!ぁ…』
どうやら台車が俺にぶつかったようだ。腕に激痛を受け、汗が吹き出し、意識は朦朧とする。
たくさんの生徒が駆け寄って来る。
ざわつきに混ざって謝罪の声が聞こえてくる。
これほどの痛みは……
そうか……
あのとき以来か……




『あー痛ぇ』
「救急車で運ばれたなんて言うからなにかと思ったよ」
「……でも痛そうやな、肘の骨折とか」
『……マジ死ぬかと思った』
瞬は病院に運ばれ、今ではギブスをしている。
灰慈と青空は駆けつけたばかりだ。
「なんやったん?原因は」
『……荷物を台車で運んでたやつが、躓いて台車を前に強く押して、さらに手ぇ離してしまったんだとよ』
「……うわー」
『俺も前方不注意だったし、そいつもわざとじゃねーから今の今まで謝られたけどさっき帰らせたよ』
「瞬が前方不注意なんてめずらしいね」
『………まぁ大したことねぇからお前らは帰っていいぞ。まだ支払いとかで病院にいないといけないらしい』
「そっか、それなら武士道にいるから時間あったら来なよ」
『ああ、連絡する』
二人が振り返ると大事なことを思い出した。
『……灰慈!青空!』
「「……?」」
『………心配して来てくれてありがとな』
「……あっはっは」
「瞬、熱でもあるのかな」
二人は笑いながらまた出口へと歩き出した。
『…………腕が治ったら覚えてろよ』
そうは言うものも、瞬は笑顔だった。


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