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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ1-1

桜の花は全て散り、春もそろそろ終わりに近付く5月、なんとなく普通な大学生の俺を待っていたのは、一生忘れることのできない大恋愛だった。





俺はぽかぽかとした陽気の下、待ち合わせ場所の駅へと向かった。
俺たちはいつもこの駅に集まる。
通ってる大学の最寄り駅だし、小さいが近代的で、綺麗な喫茶店なんかもあり洒落ている。
待ち合わせの時間ちょうどに到着。どうやら俺が一番乗りらしい。
待ち合わせと言っても、相手は恋人なんかじゃない。ただのつまらない二人の親友だ。なんて言うか、腐れ縁ってやつ。
まぁそいつらとの出会いの話は近いうちにでも。

まもなくその親友たちが姿を現した。
「おはよーさん」
そう笑顔で言う男は、冬堂灰慈(とうどうはいじ)。
容姿端麗で、いつ見てもオシャレである。第一印象で誰でも察しがつくが、けっこうな金持ち。そして父親は総合病院の院長。こういう人間は、俺の知る中では大抵は嫌なやつだが、灰慈はそういう人間とは違うと思う。いつも明るくて楽しいやつだ。
「おはよ」
まだ眠いのか、控えめな挨拶をする男は樋青空(といあおぞら)。
背が高く筋骨隆々、運動神経抜群のスポーツマン。そういう人間は決まって爽やか。もちろんコイツも例外ではない。男女問わず優しい人気者だ。しかし、こういうパーフェクトな人間にも変わった所はある。コイツはまれに見る“天然”なのだ。どれだけひどいかはこれからわかる思う。青空という不思議な名前の由来は、産まれた日がとても清々しい青空だったからだそうだ。

「瞬、なにぼけっとしてんだ?行こうぜ。」
『……ああ』
そして俺、常葉瞬(ときわしゅん)。
この二人に比べればごくごく普通の男。特徴と言えば、自慢には全くならないけれど、あまり思ったことを口に出さない、困ったやつ。何度直そうと思っても、自分自身の癖や悪い部分はなかなか直せないものだ。


俺たちはこの駅を拠点に、暇があれば適当に電車を乗り継いで出かける。
他人から見れば非常に馬鹿みたいなことだけど、俺たちにとってはそれがなぜか楽しいんだ。
灰慈は普段は高級車を乗り回しているが、こうやって三人で集まるときは、なんか電車じゃなきゃ駄目なんだ。
そして、今日もいつものようにそうするつもりだった。


少し待ったあと、今日乗ると決めた電車がホームに入ってきた。
「今日はどこで下りてみようかねー」
灰慈がケラケラ笑いながら言った。
「たまには焼肉の美味い店がいいな」
青空が言う。しかしなんだか言ってることがおかしい。
『青空、なに言ってんだ?』俺は苦笑いしながら返す。

ドアが音を立てながら開いた。
灰慈と青空が同時に電車に乗り、俺も続こうと足を上げたとき、ホームの脇に定期券が落ちているのに気付いた。
『……』
すぐに俺の定期券への視線を灰慈が察知した。
「誰かが落としたんだなー、可哀想に」
電車はしばらく停車するようなので、俺はとりあえず拾ってみた。


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