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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ10-5

「あのね、あんたみたいにお金目当てで付き合うような女は、灰慈にとって必要ないのよ」
「………」
「言い過ぎや」
灰慈が由貴を宥めると、高田はわなわなと体を震わせ始めた。
「そ…そうよ!!金目当てで付き合ってたに決まってるじゃない!!」
「……え」
高田は叫ぶ。
「灰慈が某大の学祭でバンドやったって聞いたから偶然を装って待ち伏せてたのよ!なにが悪いの?また金を巻き上げて楽をしようと思ったのよ!」
二人は何も言葉が出なかった。
「わかったわよ!お幸せにね!さよなら!!」
高田は来たときと同じようにバタバタと音を立てて出ていった。
そしてしばしの沈黙。
「………はぁ、疲れた」
「………あっはっは、マジで金目当てとはな」
「あんたの意志が弱いからつけ込まれるのよ」
「……またえらいきっついなぁ」
「……でもよかったじゃない。本性が知れて」
「せやな。それに……」
「……それに?」
「自分の心がどんだけ弱いかを知れた」
「………うん、あたしも」
「………あとな、自分の気持ちがわかってん」
「自分の気持ち?」
由貴は、なにがなんだかわからないという顔をしている。
「好きやねん、由貴ちゃん」
「……え?」
「走ってきてくれたやん、由貴ちゃん。しっかり気付いてたで」
「……それは」
「由貴ちゃんはな、脆いねんけど芯のある心を持ってるんやてわかった」
「………」
「由貴ちゃんと協力したいねん。言ったやろ、似てるんや」
淡々と語る灰慈に、由貴は目を丸くする。
「………そんなのは口説き文句でしょ。葵がダメだからとか考えてるんじゃないでしょうね」
「………ちゃうわ」
「………え」
「言うたやろ。俺は軽かないで」
灰慈はまっすぐに由貴を見つめている。
「……自惚れた考えかもしれんけど、由貴ちゃんは俺のために走ってくれて、俺のために嘘ついてくれた」
「………」
「俺はそんなこと一度もしてもらったことないんや」
「………いつもあんたはしてあげるほうだったのね」
由貴がそう呟くと、灰慈は頷いた。
「……せやから、俺は…由貴ちゃんに惚れた……悪いか」
由貴はしばらくなにも言わず、うつむいていた。
「………い」
「え?」
「悪くない……っ」
「ちょっと…由貴ちゃん…」
由貴は肩を震わせ、声を殺して涙していた。
灰慈は優しく由貴の頭を撫でた。
「本当にあんたとあたしは似てるわ……」
由貴は涙を拭うと、灰慈の頭を撫でた。
「………一緒にいてくれるんか?」
「………聞かないでよ!バカ!」
「あっはっは。よろしくな」
「ふ…ふん、調子に乗るんじゃないわよ」
「えぇ?」



勇気のない灰慈。

勇気のないあたし。

二人で協力すれば、なんでもできるのかな?


瞬、今までずっとずっと、あたしの心の支えになってくれてありがとう。


あたしはやっと、あなたを卒業できそうです。


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