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恋におちて
【教師 官能小説】

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恋におちて-3-1

とうとう買ってしまった。
ローンを組むのは家を買う時だけ、とやり手主婦のような気持ちでこつこつ貯めたマイカー貯金。社会人になってからタバコもギャンブルも一切せず、雨の日もバスやタクシーは使わず、大好きな服はアパレルに勤める義兄から安く買い…そんなこんなで通帳を見ると思わず笑みがこぼれるほど、かなり貯まってた。
近くに住む両親は普段車を使わないから、遠くに行きたい時なんかは借りれた。きっかけも必要性もなくて、なかなか今まで買わずにきたが、とうとうこの貯金を崩すことを決めた理由は、他でもない――牧本だ。

休日に電車に乗ってお出かけなんて、どこで誰が見てるかわからない。彼女と付き合ってすぐ、中古車雑誌をチェックした。ワンボックスが欲しかったから、予算的に新車は諦めた。それでもなかなかいいのが見つかって、即決した。
牧本にはまだ知らせてない。明日の日曜、初めてのデートでびっくりさせるんだ。


「すごぉい」
待ち合わせ場所に現れた牧本は、期待どおりの反応をしてくれた。
助手席に乗り込み、キョロキョロと車内を見回す。
「誰かに見られたらどうしようって思ってたんですよ。先生は待ち合わせの時間と場所しか言わなかったし、今日どうするのかなぁって」
両手を合わせて嬉しそうに笑いよく喋る彼女は、いつもと少し雰囲気が違う。
そうか、化粧をしているのか。学校ではしているのかしてないのかわからないぐらい薄化粧だが、今日は時間かけてきたのかな。そう思うとつい笑みがこぼれる。
「人の顔見て笑うなんて失礼ですよ。メイク変ですか?」
牧本がむくれたから、俺は「そういうんじゃないよ」と慌てて言った。
「どこに連れてってくれるんですか?」
「着いてからのお楽しみ」

…とは言ってみたものの、なんて事はない。着いた場所は普通の水族館。
それでも牧本は「水族館大好き」と言って、かなり喜んでくれた。
俺も水族館は大好きで、一人で電車に乗ってよく来てた。でも彼女と来るのは初めてかもしれない。ここなら少し薄暗くて、堂々と手を繋げるかな、なんて思ったんだ。
館内に入るなり、俺は牧本の小さな手を握った。青っぽいライトでよくわからないけど、きっと彼女は頬を赤くしてる。
この間、途中でやめたとはいえあんな事があったのに、牧本は未だに手をとるだけで恥ずかしがる。俺も男だし続きをしたいのが本音だけど、そんな牧本を見るとそういう気持ちがどうでもよくなったりする。
この歳になって、中学生みたいなうぶで純粋な恋愛が新鮮で、心満たされる。
「先生、もう手大丈夫なんですか?」
「動かすとたまに痛むけどほとんど平気。湿布も臭いからとっちゃった」
手を左手をブラブラさせてみせる。
牧本は安心した表情を見せると、奥の水槽に目をやった。しかしその表情がすぐにこわばり、ぱっと繋いだ手をほどかれた。
そこにはA組の男女が四人、楽しそうに魚を見ていた。
一人の女子が固まってる俺達に気付き、目を丸くする。
「加奈と三木じゃん!」

四人の男女にいろんな事を聞かれ、いろんな事を言われたけど、よく聞いていなかった。とにかく頭の中は何て言ってごまかそうか、シナリオを組み立てていた。
「まさか二人、デキてんの?」
行き着くところはもちろんそこだ。
「そんな訳ないだろ」
俺は必死に否定した。
「牧本は家族と来てて、俺は甥っ子連れて来てたんだよ。偶然会ったから話してたんだ。あ、牧本も早く戻ったほうがいいんじゃないの?待たせてるんだろ?」
目で合図を送ると、牧本は黙ったままこくりと頷く。
「そうだよねー、二人デキてたら笑えるよね」
何も知らない四人は笑ってる。
「じゃあ、先生もみんなもまたね」
出口に向かう牧本は寂しげな顔をしてた。
でもこればかりは仕方ない。俺だって嘘をつきたくてついたわけじゃない。
<駐車場にいます>
すぐに牧本からのメール。
「俺も早く行かなきゃ」
そう言って、四人を残して俺も出口に向かった。


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