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『Beast of Prey』
【痴漢/痴女 官能小説】

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『Beast of Prey』-2

「ひひ…、いい子だ」
嘲笑するような声が頭の中で回る。
「でもつまらない小細工をしたお仕置きをしなけりゃな…」
笑いは一瞬にして冷気を帯びた声になる。
ぐいっ!
その瞬間、シャツを捲くり上げられた。ピンクのブラに覆われた胸が露わになる。
「や…!」
千鶴の前にいた二人の中年はギョッとする。
−嫌…!
元に戻そうとしたが、両手を後ろに押さえ込まれ、がっちりと掴まれていた。
「よーく見てもらいな」
ブラに手を突っ込み、千鶴の柔らかな乳房を揉み上げた。
「ん…っ!」
二人の中年はチラチラと盗み見ている。助ける気配はなかった。
「はぁ…、たまんねぇ…、おっさんたちも触りたくてたまんねぇんだろうよ」
下卑た笑い。
−こんなのイヤ…。

きゅむっ!

「っふ…!」
乳首を摘み上げられた。
−見ないで…!
中年は確かに目を奪われたかのように凝視していた。息を呑む音さえ千鶴には聞こえた。
くにくに。

そんな千鶴を嘲笑うかのように、男の指は責め立てる。
「くぅ…」
千鶴はより人目に曝されることを恐れ、声を押し殺した。
その眺めは目の前の中年には官能的に映った。一人がたまらず手を伸ばす。
ぷ…にゅ。
「っ…!」
人差し指でブラの上から乳房を突く。
騒ぐ様子が見られないと安心したのか、その指をツツ…と滑らす。
「は…ぁ」
千鶴は思わず大きく息を吐いた。
感じている−。
嫌悪を抱いている中年に。
ぴく−。
今度は下半身から寒気を感じた。
ショーツ前面を指先がなぞっている。もう一人の中年のものか。
胸を撫でていた中年はブラの縁に指をかけると、一気に剥いた。
ぷるっ…。
現れた乳房に鼻息を荒くする。
−いやぁ…。
親指と人差し指でそっと乳首を摘むと、その弾力を楽しんだ。
既にショーツの中へと潜り込んだ指は、もう潤っている秘部へと進んでいた。
ぬちゅぬちゅ…。
その水音は電車の音で掻き消されているが、千鶴には確かに聞こえていた。
「しょうがねぇな、おっさんたちは」
クククという低い笑い声をもらす後ろの男。
掴まれた手になにか熱い物を感じた。
妙な手触りに、それが陰茎だと気付く。
慌てて振りほどこうとしたが、できなかった。
−気持ち悪いよぉ!
今にもはち切れんばかりに硬直している。
三人の男に責め立てられ、気が気でない。
その時、千鶴の下りる駅名をアナウンスが告げ、電車がゆっくりと停まる。
掴まれた手の束縛が緩むのを察すると、ふりほどき、急いで服を直した。
ドアが開いて多数の乗客が吐き出されるように出ていく。その波に乗って千鶴は安堵する。
背後で舌打ちが聞こえたような気がした。

「もう電車乗るのやだー」
講義室の長机に突っ伏して千鶴はぼやく。
それを聞いていた友人の桜は苦笑する。
「早くお金貯めてクルマ買わなきゃだね」
「後どれくらいかかるんだろ。もううんざりだよ」
「早い電車で来るとかさ」
「あたし朝弱いもん。それに早く来ても時間潰すのだるいし」
膨れた顔で不満を漏らす。
ごん、と独和辞書を千鶴の頭の上に乗せる桜。
「いったい」
「だったらちゃんと抵抗しな。痴漢なんてキッて睨みゃ怯むんだから」
「キッ」の目付きをする。
「キッ、ねぇ…」
千鶴も真似る。
「ダメだこりゃ。全然迫力ないもん」
「そんなこと言ったってこんな顔なんだもん」
ますます膨れた。
「じゃあさ、針を隠し持ってぷすっ!とか」
「は、はり」
「あ、でも下手なことすると後が恐いかもねぇ」
「さくらちゃあん…」
その時、ドイツ語の講師が教室に入ってきて授業が始まった。
桜は小声で耳打ちする。
「今日、晩御飯おごってやるからさぁ。元気出しなよ」
桜の慰めにほんの少し元気が出た千鶴だった。

桜は自宅で手料理を振る舞ってくれた。
料理を堪能した後で借りて来たビデオを一緒に観た。思わず微睡(まどろ)んでしまいそうになった。
桜は泊まっていけばいいと言ってくれたが、次の日は朝から農学部の専門授業があるので断った。
帰りの電車に乗り込んだ時にはもう十時を過ぎていた。アパートに着く頃には十一時になるだろう。
行きとは違ってシートは空きだらけだ。いつもこうだといいのに、と思いながら座り込むと、再び眠気が挿した。
−だめ、下り過ごしちゃう…。
自制するも、ついうとうととしてしまった。


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