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『Beast of Prey』
【痴漢/痴女 官能小説】

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『Beast of Prey』-1

ガタンガタン…。

足裏から来る振動にもびくともしない。
それ程この狭い空間には人間が詰め込まれているのだ。それでも、中の人間達は大人しく納まっている。息苦しそうな表情をするも、その不平を口にする者は、いない。

千鶴はこの空間にいると、缶詰の中にいるような気分になる。
−早く下りたいな…。
小さく溜息を漏らした。

千鶴はこの春、地方からある都市にある大学に入学したばかり。
彼女は今、住んでいた田舎では味わうことの出来ないこの電車のラッシュアワーに四苦八苦していた。

農学部の畜産科−、それが彼女の学科だ。というのも千鶴の実家では乳牛の畜産を営んでいる。家業を継ぐためにも、専門的に学びたかった。彼女の熱意は強く、入学当時は学ぶ意欲で千鶴の胸はいっぱいだった。
しかし、それは日々希薄になってきている。というのは、このラッシュアワーに原因があった。

彼女のアパートは大学の近くにある。しかし、その学舎は色んな畜産動物を抱える農場を備えた、農学部専門の学舎である。大学一年での授業は一般教養が主であって、その講義は教育学部で行われることになっている。土日を除いて、週五日のうち、三日は教育学部へ行かなければならない。
都心部の教育学部とその郊外の農学部では駅八つ分離れている。時間にして約四十分。足のない千鶴にとって、電車が交通手段になった。
ベッドタウンとなっている農学部のある駅から、数々の企業を抱えた通勤圏の都心部にある教育学部へは朝の通勤時刻ともなると、始めから終わりまできっちり満員電車に巻き込まれることになる。また、帰りの時刻も下手をすると帰宅ラッシュに巻き込まれる。

千鶴は一年だけ我慢すればいいと思ってはいるものの、週三回もこの洗礼を受けることを考えると、好い加減辟易する。
ラッシュだけならなんとか辛抱したが、彼女を悩ます最大の原因は痴漢だった。

今朝も電車に乗り込む彼女の顔色は良くない。乗客はサラリーマン風の中高年が多い。彼女は大体にしておじさんという人種が好きではない。特に漂う加齢臭が気に食わない。本人達も好き好んで発してるわけではないと頭では解っているものの、苦手な物は苦手なのだ。
今日も周りをおじさんで固められると泣きそうな程切なくなる。

−あ…!
腰に異物感を感じる。
臀部の柔らかいところをぐにゃりと握り締められたような感覚だ。
入学したての頃は、手の甲で軽く摩(さす)るだけの痴漢かどうか解らないくらいの手合いが多かった。ところが最近ではその動きは活発になってきている。「常連」なのか。
千鶴には痴漢に抗えるほどの勇気がなかった。痴漢もやはり標的となる者にはある程度、「当たり」をつけている。千鶴のような大人しい子は格好な餌だ。

ハァ…ハァッ…。

肩越しに息がかかるのを感じる。
気分が悪くなる。
どんな男かわからないが、こんな人の多いところで欲情するなんてロクな奴ではない。

むにゅう…。

その指はスカートを捲くり上げ、内部に潜り込む。
−う…。
今日はストッキングを身につけていた。千鶴にしてみれば、それはやっと考えついた策で、強固な砦となるはずだった。が、
ビッ…!
−嘘!?
ピリピリっ…。
微細音が太股を伝って聞こえた。
ストッキングを引き裂いている−、即座に理解するとぞっと悪寒が走った。
「…こんなモンでどうにかなるかと思ったのか」
その低い声はまくし立てるように千鶴の耳元で囁いた。
太く節くれたった指がすかさずショーツの中に潜り込み、肉の割れ目に押し入った。
「ぅく…」
恐怖と痛さで涙が滲む。
千鶴は処女ではないが、渇いた秘部に無理矢理押し込まれるのは矢張り苦痛でしかない。
怒りを買ってしまったのか、千鶴は体を震わす。
しかし、背後の男は卑猥な笑いを押し殺すように耳打ちした。
「大人しくいつも通り感じてればいいんだよ」
途端に千鶴の体がかっと熱くなった。羞恥と怒りのためだった。

慣れという物は恐ろしく、初めて痴漢に遭遇した時分は、怯えて物を考える余裕もなかったが、最近では体が敏感に反応し始めていた。もちろん、千鶴の意思ではどうにもならないことだった。
それを後ろの男は知っていたのだ。
泣きそうな程悔しくて情けなかった。こんな侮辱的なことを言われて何も出来ない自分に。


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