投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

いつか、目の前にの最初へ いつか、目の前に 7 いつか、目の前に 9 いつか、目の前にの最後へ

いつか、目の前に…… (真実)-2

「はぁはぁ 北川!!」
「中山先生!?」
そこには何かと俺にちょっかいを出して来る担任、中山空人が肩で息をしつつ目を血走らせ立っていた。
扉の開く音に驚いたのかマナミちゃんが大声を出して泣き出してしまった。
「北川、その子はな、その子はな」
マナミちゃんをぷるぷる震える指で指した。
「俺の子だ!!!!」
え、と、と言う事は……
「俺と別れた嫁の間にできた子でな、たまに七鳥に世話を頼んでいたんだ。 おい、北川聞いているのか?」
俺には中山先生の声など届いてはいなかった。
マナミちゃんの父親が中山先生で母親がミナモ…………。
「こら、北川。俺の話を聞け」
肩を鷲掴みにされ、体を揺すられる。
「お兄ちゃん!! 話をややこしくしないでください!!」
ミナモが中山先生をにらみながら言った。
「お、お兄ちゃん!?」
ななななななななな、父親でお兄ちゃんで母親で妹でぇえええ!!
「ミナモは黙っていろ、バレては事だからな。 ただでさえ奴にそっくりなんだ、そんな事をこいつが知ったら調子に乗ってお前に卑猥な行動を」
「北川君はそんな人ではありません!! それに北川君にはもう本当の事をお話しました」
中山先生の動きが止まる。
俺の頭はまだまだ大混乱の真っ只中だったりする。
「……本当か?」
ミナモがゆっくりとうなずく。
マナミちゃんの泣き声だけが響いていた。


今、俺はだいぶ落ち着いて来た。
机を挟んで対面にミナモ、はす向かいに中山、少し離れた所にあるベビーベットには泣き疲れたのかマナミちゃんがすやすやと寝息を立てている。
部長さんは気を利かせたのか何処かへ行ってしまった。
「北川君、ごめんなさい。 兄の言動はすべて嘘ですから。マナミの父親、つまり私の夫は七鳥順一郎と言います。 北川君にそっくりで初めて会った時はびっくりしたわ」
初めて会った時、つまり始業式の朝。
確かに俺に向かって順一郎さんと言っていた様に思う、だが名前まで似ているとは。
「奴は俺の小さい頃からの親友だった奴で、エリートを絵に描いたような男だった」
「あの、さっきからだった、だったと過去形で話してますよね。 何かあったのですか?」
口を開きかけたミナモを遮るように中山先生は手を出して、「俺が言う」と言った。
「奴は仕事でタンザニアに行っていた、臨月に入ったミナモを置いてな。 まあ、予定日の3日前には帰る予定だったが」
中山先生はお茶を一口すすった。
「ハプニングが起こったのは帰国の日だった、ミナモが産気づいたんだ。 奴は予定の飛行機より一つ早い飛行機に乗った。 ……それが間違いだった、その飛行機が離陸に失敗して奴は死んだ。 お前もニュースで見たはずだ」
確かにニュースで四六時中取り上げていたきがする、なんでもテロの可能性が否めないとかなんとかで。
「その日、マナミが生まれた」
すやすやと眠るマナミちゃん、それを見ていると何故かみんな自然と顔がほころんだ。
「私、思うんです」
ミナモが笑顔で言った。
「順一郎さんはマナミも私もずっと見ていてくれていると」
五月のさわやかな陽気がミナモを照らし、キラキラ輝いて見えた。

〜続く〜


いつか、目の前にの最初へ いつか、目の前に 7 いつか、目の前に 9 いつか、目の前にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前