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いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

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いつか、目の前に…… (出会い)-1

ジリリリリリリ!!
けたたましい音、意識が心地良い世界からなんとも居心地の悪い世界へと戻って来た。
手を伸ばし音源を叩く。
目覚まし時計は沈黙した。
まだはっきりとしない意識の中で、時計を見る。
………………。
AM9:00。
完全に遅刻だ。
くそ〜、なんで新学年になった初っ端から遅刻なんだよ!
急いで用意して玄関から飛び出た。
「順、いってらっしゃい」
笑顔で手を振る母さん。今は答えている時間が惜しい。
自転車に飛び乗り、全速力で漕いだ。
「母さん、順一は何を慌てて出ていったんだ?」
「確かに学校に行くには早すぎますね」
父さんは腕時計に目をやった。
AM7:10。
学校まではゆっくり行っても30分以内で着くはずだ。
「まあ、遅刻するよりはましか。あいつは遅刻癖があるからな」
「私なんて順の目覚ましの時間を一時間早めておきましたよ」
「奇遇だな、私も一時間早めておいたんだ」
父さんと母さんはハハハハハと笑った。


人間とはやればできるもので、10分足らずで学校へと到着した。俺はすぐに異変に気付いた。
誰もいない。
昇降口にある時計に目を向ける。
AM7:20。
始業まで一時間、あまりにも長い。
とりあえずクラス分けを見る、今日から俺も高校2年生。 恋の一つもしてみたい年頃だ、残念ながらまだ彼女はできたことはないが。
2ーC、そこに俺の名前があった。
「お、東山も西口も南原も同じクラスか」
小学校からの友達である面々、とりあえず話し相手に事欠くことはなさそうだ。

とりあえずクラスへと足を向けた、他に行くところもないしな。
一人で携帯のアプリでもして時間を潰すか。
引戸になっている扉を開ける。
誰も居るはずはない、そのはずだった。
窓際の最後尾、窓から差し込む光に照らされてキラキラと輝く黒髪、整った顔立ち、座っていても分かる脚線美。
どこのモデルさんなのかと思ってしまうほどの美人がそこにはいた。
彼女に見とれていた俺は教室の扉にたたずんだままだ、全身がしびれたような感覚。
もう少しこのままこの風景を目に焼き付けておきたい。
さすがに彼女も俺に気付いたようでゆっくりとこちらを向いた。
俺の目線と彼女の目線。
にやけた面をした俺。
何故か驚いた様子の彼女。
「じゅ、じゅ、順一郎さん!」
「え、あ、はい? 僕は順一ですが?」
とたん、曇った表情になる。
「ご、ごめんなさい。そうよね、そんなはずないわよね」
彼女はこちらから顔を背け窓の外を向いてしまった。
「あ、あのさ。 お、俺、北川順一。 去年A組だったんだ。 よ、よろしく」
とりあえず自己紹介。何とかしてこの娘と仲良くなりたかった。
彼女は再びこちらを向き微笑。
「七鳥ミナモ。私、去年休学したので、留年なの。 話し相手ができないだろうなって思っていたのですが……」
立ち上がって俺の手を掴むミナモ、少し冷たい手がやわらかくって、ドキッとした。
「北川君、私と仲良くしていただけませんか?」
「ももももももも、もちろんですよ!」
ミナモはニッコリと微笑んだ。


「っく、なんってこった。 奴等にそっくりじゃねぇかよ」
廊下から覗く影。
それは誰に気付かれるわけでもなくその場を後にした。


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