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いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

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風に連れられて…… (誘い)-1

7月、俺がミナモの秘密、つまりマナミちゃんの事を知ってから二ヶ月。
俺は放課後にミナモと連れ立ってマナミちゃんに会いに行くのが当たり前となっていた。
マナミちゃんも俺になついてくれたようで、抱っこしても泣かなくなり、笑顔をみせてくれるようになっていた。
「マナミったらすっかり北川君になれたみたいね」
「えへへ、そうかな?」
なんともほっこりとした時間が流れている。
「あぶぅ、あぶぅ」
「ん? どうしたの?」
マナミちゃんは俺を呼ぶ時はかならずあぶぅと言う、まだ一才に満たない赤ん坊なのに人の見分けがついているとはなかなか賢い子である。
「うー、ううう」
窓の方へと一生懸命に手を伸ばすマナミちゃん。
「外がみたいみたいだね」
マナミちゃんを抱き上げて窓際まで行く。
「どう、見える?」
マナミちゃんは窓ガラスを手でとんとんと軽くさわって、ちらりとこちらを見たかと思うとまたガラスに興味を移す。
「うふふふふ」
「? 七鳥さん、どうしたの?」
振り返るとミナモは優しく微笑んでいた。
マナミちゃんの愛らしさとはまた違った癒しを感じた。
「いえ、北川君とマナミが親子みたい見えたから」
マナミちゃんと俺が親子みたい、と言う事はマナミちゃんの実母であるミナモとは夫婦のようだと言う事か?
思わずにやける。
「そうだ、今週の土日は空いてますか?」
「え、う、うん。バリバリ空いてるよ! たとえ空いてなくても空けるよ!!」
週末の予定を聞いてくるとは、これはもしやデートのお誘いか!?
「よかったぁ、ちょうど兄が出張で家を空けるんです。それにお手伝いの方も、庭師の方も実家にかえるらしくて。そこで、北川君に泊まりに来ていただきたいんです、私とマナミの二人だけじゃ不安で…… お願いできますか?」
「ね、願ってもな いやいや、良いですよ! 僕なんかでよければ一日と言わず一か月でも一年でも泊まりますよ!!」
全く持って願ってもない事だ、まさか家に呼ばれるだけでなく泊まって行ってくれなんて…… 最高!!
「そういえば、お手伝いさんとか庭師とか言ってたけど七鳥さんの家ってお金もちなんだね」
「あまり否定するのも逆にいやらしいので隠しませんが、私のお祖父さまが中山物産の社長を勤めています、お父さまは中山病院の院長をしていますし、母はファッションデザイナーとして活躍しています」
まさにミナモはお嬢様といった所か、いやいやこの美貌で成績優秀、スポーツ万能、性格も人さわりがよく、その上大金持ちのお嬢様。非の打ち所がないとはまさにこの事だな。
ミナモは僕の腕の中でいまだにガラスに興味をしめしているマナミちゃんの手をとり。
「マナミよかったね、北川君が泊まりに来てくれるって」
「ふへ」
マナミちゃんはすこしきょとんとしたが、母親の笑顔につられ、笑った。
まるで絵画にでも描かれてているような、そう芸術品をみているような感覚を覚えたのは僕だけなのかな?


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