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いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

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いつか、目の前に……(追跡)-2

「いつもすいません」
「いえ、わたしの方こそ。 なんとか体制を整えられれば良いのだけれど」
「そんな、私が無理を言っているのです。 授業の間だけ見ていてくれるだけでも、すごく助かっていますし」
垣根から少し顔を出して様子をうかがう。
ミナモと初老の女性が向かい合って互いに頭を下げあっている。
「ミナモちゃんが大変なのは私は十二分に分かっているつもりよ。 これからもこんな事しかできないけど、助けてあげるからね」
「ありがとうございます」
「それに、マナミちゃん大人しいし。 見てて癒されているのは、私のほうだしね」
女性は、ほほほと上品に笑った。
今の会話に新たなる登場人物の名前が出て来た。
『マナミ』
気になる……
もう少し近付かないと詳細が聞き取りづらいな。
俺はゆっくりとつつじの垣根を越えて、窓の横の壁にペタリと背中をつけた。
某スパイゲームのようだな……
「やっぱり、お母さんに似るんだろうね」
お母さん?
「マナミちゃんもきっとこんな美人さんになるんだろうね」
「いえいえ、そんな事はないですよ。 マナミはどちらかと言えばあの人に似ているんです」
あの人?
バキ!!
俺は盗み聞きするのに集中し過ぎて、落ちていた枯れ枝に気付かずに思いっきり踏んでしまった。
「あら? 猫かしら?」
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
あまりにやばいので頭がパニック状態。
早く逃げなくてはならないって分かっていても、足が言う事を聞かない。
ガラガラ
窓が開く、ミナモが一人の赤ん坊を抱き抱えて顔を出す。
「マナミ、ニャンニャンいない…………」
目と目が合う。
なんか始業式の朝を思い出す。
「えっと…… どうも」
「…………、北川君」


〜続く〜


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