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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-96

「まぁ、品子は他のところで俺たちを助けてくれるからな」
「それにしたってね……」
 雄太の言葉も効果なく、がっくりと肩を落とす品子であった。
「次は、守備だな。頼む、品子」
「う、うん」
 気を取り直し、カタカタとリズムよくキーボードを響かせる。画面は、球場を模した背景に変わり、試合の中継などでよく見る守備位置の一覧表を映していた。
「キャッチャーと、ショートがいませんね」
「留守と、植田が抜けたからな」
 内野にとって、肝心のポジションが二つとも抜けている。素人では一朝一夕にできない守備位置だから、雄太や品子は相当に頭を痛めているのではないだろうか。
「とりあえず、この穴をどうにかして埋めないとな。まぁ、ショートには岡崎を廻すっていうのはもう決めてあるから。……問題は、キャッチャーなんだ」
 腕を組んで、唸る雄太であった。
「はい、はい!」
 にわかに陰鬱になった空気を払ったのは、桜子の陽気である。
「屋久杉先輩。あたし、キャッチャーやりたい!」
「え?」
 確かに桜子は野球の経験者といえるが、まだまだ雛鳥同然のはずだ。
「しかしだな……」
 雄太の惑いは、当然といえば当然だろう。捕手は野球を熟知している必要がある。今のところ、それが務まりそうなほどに野球に精通しているのは、雄太を除けば岡崎か品子しかいない。もっとも、彼のフィールディングは内野守備には欠かせないので捕手には廻せないし、品子では技術的に捕手は務まらないだろう。
「あたし、お兄ちゃんのチームでもキャッチャーしてたよ」
「そうなのか? ……まぁ、禅問答してても仕方ねえ」
 ややあって、雄太は何かを思いついたように立ち上がった。
「実際に、試してみた方が早い。岡崎、勧誘活動は後回しにするぜ」
「練習するのか?」
「おお」
 陣羽織を脱ぎ、鉢巻を外すだけでなく、なんと彼はおもむろに上着まで脱ぎ出した。
「きゃっ、雄太!」
 品子が慌てて、顔を伏せる。引き締まったその肉体をいきなり見せられたのだ。無理もあるまい。
 一方、義兄である龍介の裸体を見慣れている桜子(誤解しないで貰いたいが、例えば風呂あがりの時とか、夏の熱帯夜の時など、パンツ一丁で過ごしている龍介の姿に慣れているという意味である)は、冷静にその肉体を眺めていた。
「なんだよ、可愛い声出して。見慣れてるだろうに」
「バカッ! 状況を考えなさいよ!」
 女子が二人もいる空間で着替えようとする雄太のデリカシーのなさには、さすがに品子も唖然とする。
「もう! 行こう、桜子ちゃん」
 桜子を促すようにして、部室を出る品子。この部室はロッカールームも兼ねているから、着替えもこの中でしなければならない。男女が交じり合っている野球部だから、交代で着替えをしなければいけない不便さはどうしても出てくる。
 ぴしゃり、と建てつけの悪いはずの扉がスムーズに閉められると、品子の怒気も気にならない風に、雄太は岡崎の方を向いた。
「予備のユニフォームって、あったか?」
 大和と桜子の分である。
「留守と植田のお古でよければ、ある」
 雄太が訊くよりも早く岡崎は、クリーニングに出してそれをそのまま持ってきたと言う感じの真新しいユニフォームを取り出していた。その用意の良さは、事務的な能力にも優れた岡崎ならではである。本当に彼は、随所に心配りが利いている。


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