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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-95

「品子、“はやぶさくん”を起動してくれ」
「ええ」
「はやぶさくん?」
 雄太の言葉を受けるや、品子は傍らのノート型の端末を取り出しそれを起動させた。
「これを使うとよ、過去の隼リーグのデータもそうだし、今の戦力分析なんかも全部引っ張ってこれるんだぜ」
 なにしろ、隼リーグはそれだけで刊行誌ができるほどの隆盛を見せている。その刊行誌を発行している“あけぼの出版”は小さな出版社だから、さすがに年に二回という超不定期雑誌となってはいるが、綿密な取材と練られた原稿は目を引くものがあり、リーグ関係者には必携の一冊にもなっていた。
 品子はそのバックナンバーを全て購入し、必要となるデータを、スキャンを使って端末の中に押し込み、それらを簡単に検索が出来るように加工した。驚くべき異才である。
「凄いですね」
「凄いよなぁ」
 大和は唸り、何度も見ているはずの雄太もそれに応えていた。冷静さを装っている岡崎ではあるが、彼もこれを見るたびに本間品子という存在のありがたみを感じて止まない。
「なにを見るの?」
「去年の俺たちのデータだ」
「了解」
 品子は、素早いキーボード操作で双葉大学の戦力分析と、昨年の2部リーグにおける戦いの全データを引っ張り出してきた。
「まずは、打撃からね」
「率で、並べてもらえるか?」
「わかったわ」
 並び替えを行い、エクセルの表計算に似た配列の中で文字と数字が躍る。

 岡 崎  打率 .628 本塁打 2 打 点 12
 屋久杉  打率 .515 本塁打 4 打 点 21
 栄 村  打率 .272 本塁打 0 打 点  2
 留 守  打率 .264 本塁打 0 打 点  4
 若 狭  打率 .242 本塁打 1 打 点  6
 植 田  打率 .210 本塁打 0 打 点  2
  浦   打率 .185 本塁打 0 打 点  1
 吉 川  打率 .115 本塁打 0 打 点  0
 本 間  打率 .000 本塁打 0 打 点  0

「………」
 数字が顕著に、双葉大学の現状を語っていた。雄太と岡崎の二人の数字が抜きん出ており、双葉大学の攻撃力そのものになっている。
 それは即ち、選手層が猛烈なまでに薄いということだ。よくこれで、優勝できたものだと思ってしまう。話によれば、かなり大差をつけた2部リーグでの勝利だと聞いた。だとしたら、同じ“隼リーグ”でも2部のレベルは容易に図ることが出来る。
(入れ替えがこれまでないわけか)
 二十年近くも同じ面子で磐石だという1部リーグの理由を、大和は察することが出来た。
「しかもこれで、今年から留守と植田がいないんだよ」
「それは……」
 特に留守という選手は、成績では四番手にある。植田と言う選手は、打撃の数字は低いが、守備の要とも言うべき遊撃手だったそうだ。そんな二人が部を去ったことで、現状は更に厳しくなっていると雄太は嘆く。
「品子さんのところ、数字がないけど?」
「う……」
 桜子の指摘に、品子が絶句した。無垢にその理由を聞いてきた桜子には当然悪意など存在しないのだろうが、それは品子の自尊を傷つけるものだ。
「わ、私ね……ヒット、打てなかったの」
「え」
 試合数がどれだけあるか、まだわからない。だがしかし、9人しかいない状況ならば、昨季は全ての試合に出ていたはずだ。それで、一本の安打も打てなかったというのは、別の意味で豪快である。


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