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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-97

「気にならないなら、これを使ってくれ」
「ありがとうございます」
 その岡崎から、ユニフォームを受け取った。
 話によれば、大和の体格は植田に近いという。桜子はあの通りの長身だから、若狭に次いで部の中では大きい方だった留守のものを使ってもらうよりないだろう。それでも、ひょっとしたらきついかもしれないが…。
「きついです……胸が」
 着替えを済ませ、代わりに中に入った女子二人を待っていた三人が真っ先に目にしたのは、案の定、張り詰めた胸の圧迫感に辟易としている桜子だった。後に別注で、桜子のユニフォームが用意されることになると、ついでながらここに書き添えておこう。



 部室からやや離れたところに、軟式野球部の練習場はある。はるか昔、校舎が立っていたというその敷地は、その校舎が取り壊されて以降、長い間荒地となって捨て置かれていた。それを苫渕が野球部のために大学から使用の許可をもらい、野球の練習ができるように改めて整備したのだ。
“整備”といっても、野球部全員で草をむしり、丹念に砂利を取り除き、ローラーで平らにしたものだ。設備が整っている大学から見れば信じられないほど劣悪なグラウンドには違いないが、それでも野球部にとっては充分な環境である。
「じゃあ、桜子」
「はい!」
 ランニングから始まり、ストレッチ、そして、キャッチボールと入念なアップを体に施してから、早速とばかりに雄太がマウンドに立った。キャッチャーを志願した桜子の実力を量るためだ。
 既に彼女は、マスクと防具一式を装着し、ミットを手にして守備位置についている。
(へえ、なかなか)
 桜子の構えを見た雄太は、意外に堂の入ったそれに感心した。なるほど自ら志願してくるだけのことはありそうだ。
(構えるだけが、キャッチャーじゃねえけどな)
 プレートを踏みしめ、振りかぶる。その恰幅のよさからは想像もつかないほどに柔らかい一連の動きで、雄太は初球を投じた。

 パン!

 非常に小気味のいい音がミットから響く。
「ちゃんと、捕っている」
 岡崎は、思った以上にキャッチングの技術が備わっている桜子の技量に安堵した。
 捕球というものは、単にグラブの中にボールを収めればいいというものではない。正しい捕球のポイントというものが存在する。そしてそれは、親指と人差し指の間だ。
 掌に寄りすぎては、ボールを掴むのに握力を十分に生かせないし、指先だけで掴まえようとしても、ボールの勢いに負けて零してしまうだろう。
 例えグラブを手にしていても、素手で掴むようにボールを捕球しなければならないのだ。これはやはり、日頃の修練がものを言う。

 パン! パン! パン!

 只の一球も零すことなく、桜子は雄太の球を受け止めている。捕球の基礎は十分に体得していると見て好いだろう。
(京子さんに、いっぱい鍛えてもらったもん)
 実のところ、大学に合格してから桜子は、入学式までの間、暇を見つけては京子の指導を受けて野球の練習に励んでいた。
 草野球の試合で捕手になった時、ボールを受け止めることの楽しさに魅せられた彼女は、ポジションにつくとしたら捕手がいいと思うようになっていた。
『やっぱり、“捕る力”が一番大事だよ。安心して、投げられるからね』
 投手の立場から捕手の能力を説明してもらい、グラブの感覚を素手のものに近づけるよう常に心がけ、桜子は捕球力を高めていったのだ。


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