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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-85

「センパイは、やらないんですか?」
「僕? そうだな、やろうかな」
「あは、どうぞ!」
 バッティングセンターに来るまではそのつもりはなかったが、この空気に触れてしまえば大和としては意欲も出てくる。
 結花が譲ってくれた場所に入り、まだ残っている自分のカードを差し込むと、大和は設定を入力した。スピードは140キロ、もちろんアクティブモードである。
「………」
 制服でしかも靴は運動に全く適さないものだ。何度か素振りをしてその違和感の具合を確かめると、大和は打席の中で構えをとった。
 映像の投手が現れ、まずは第一球目を投じる。140キロの設定だから、凄まじい勢いでストレートが襲いかかってきた。

 キィン!

「え……」
 鋭いバットスイングがあっさりとその球を捕らえる。結花がその打球を追いかけるよりも早く、
『ゲッツ! ナイス、ホームラン!!』
 と、言う音声が響き、館内に陽気な音楽が流れた。なんと大和が打ち放った打球は、高らかな放物線を描いて、ホームラン賞を獲得できる看板に当たったのである。
(い、いきなり……)
 結花は言葉が出ない。瞠目したまま、大和のバッティングを見つめるだけだ。
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
 なんと、立て続けに4本も看板に当てた。かすかなどよめきが、館内で起こる。
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
『ゲッツ!』
 三球ほど、“二塁打”と記した看板にあてた後、今度は五球連続して“ホームラン”を放つ大和。いつのまにやら、彼の後ろにはギャラリーができあがっていた。
 確かに、ホームラン賞となる看板は、“豪快一打”という店名そのままに、一般に比べて大きめに出来ているが、逆に距離を多めにとっている。看板にあてやすいといえばそうだが、そこまで飛ばすことが大前提である。
『ゲッツ!』
 おおー、と湧くギャラリー。140キロのストレートも、カーブやチェンジアップによる揺さぶりもものともせずに、とにかく打球を飛ばし続ける大和。現時点で既に、10本の“ホームラン”を記録していた。1打席だけで、月間通算ランキングの10位圏内に躍りでている。
 終盤はさすがに疲れが出たか、本塁打はほとんどなくなったが、それでも25球という所定の球数のうち、実に14本を本塁打の看板に打ちあてた。年間通算ランキングの3位と同数である。
「………」
 結花は言葉をなくしていた。大和の空気を切り裂くような鋭いスイングと、そこから放たれる弧の美しい打球に、完全に魅せられていた。それは、ギャラリーも同様である。
 大和がブースをでようとしたとき、入り口にちょっとした人の波があったので少し驚いた。それでも軽い会釈を忘れないのは、大和の真摯なところだ。
「セ、センパイ、すごすぎ……」
「結構、調子良かった」
「ケ、ケッコウどころでは」
 結花は畏れるばかりだ。軟式とはいえ、140キロのストレートに変化球が混ざるのだ。それを思えば大和の打撃は神がかっているとしか言いようがない。
「誰かと思えば、大和じゃないか」
「あ」
 大和の打撃が終了したことでまばらに散っていったギャラリーの中から、恰幅のいい髭の男が寄ってきた。


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