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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-84

 それが、力があるというわけでもないのに、大きくて雑なスイングになった。調子の下落は、明らかである。
「わかってるんです。だから私も、直そうとしてるんですけど……」
 どうやら、変な癖が染みついたらしい。困ったような結花を前に、大和は少し考えに集中すると、ややあってから指導した。
「え? 足を?」
「そう。打席に入って、両足を絶対に浮かさないでバットを振ってごらん」
「は、はぁ」
 促されるまま、結花はブースに入ると、カードを機械に挿入し設定を入力する。ストレートのスピードは130キロ前後。もちろんモードは、変化球が混ざる“アクティブ”。
「グリップも、余して!」
「は、はいっ」
 長く持っていたバットを、結花は慌てて短く持ち替えた。
(足をあげない……)
 両足と地面を磁石で引っ付けたものと考え、結花は初球を待つ。映像の投手が腕を振り、球が出る四角い口から白弾が飛び出してきた。
 その球種は、いきなりカーブ。
「!」
 言われたとおり、足をあげずに腰の動きだけでスイングを始動する。窮屈な感じはしたが、バットを短く持っていた賜物か、思いのほか鋭いスイングとなり、曲がってきたカーブの軌跡をしっかりと追いきることが出来た。

 キン!

 と、小さなスイングの割には、強い打球が飛ぶ。
「ナイス!」
 大和は手を叩いた。
「………」
 かたや結花は、いきなり結果を出した大和のアドバイスに、驚きを隠せない。
 二球目、三球目とストレートが続いた。それに対し、やはり足を浮かさずに腰の回転だけでバットを振り、その球を叩く。
 きん、きん、とこれもやはり爽快な手応えを残して、痛烈な当たりを生んだ。
 自分でもわかるほど、すんなりと腰が回転している。足を浮かさないように意識をすることで、接地した両足に“タメ”が利くようになり、だからこそ、ストレートに対しても変化球に対しても、タイミングを誤らずにスイングができた。
 その後も彼女は、好打を繰り返した。
(足のあげ方も、高かったから……)
 いっそのこと、完全にあげさせないでバッティングをさせてみたのだが、効果はあったようだ。それにしても、言ったことをすぐに消化し、吸収してしまう彼女の運動能力には大和も舌を巻く。
(蓬莱さんもそうだったな)
 不意に大和は、桜子のバッティングフォームを思い出していた。
 彼女の場合は、完全な“手打ち”である。腰の回転や、バネを生かせていない、振り回すだけのスイングだ。それでも、ホームランを打ててしまう怪力は凄まじいものがあるが、おそらくは緩急に対し、相当に弱いだろう。
 バッティングの要になるのは腰の回転と膝のタメだ。それを軸にして体重をバットに乗せれば、非力であってもボールを遠いところまで運ぶことが出来る。また、緩急にも柔軟に対応できる。
 大和が結花にさせた足を浮かさないで打撃を行う練習は、トスバッティングの応用である。腰の回転をとにかく意識させ、始めから膝のタメを必要とさせる効果があった。
「はぁ〜」
 所定の球数を終えた結花が、心地よさそうな顔つきでブースを出てきた。
「よくなったじゃない」
「センパイのおかげです。やっぱり、センパイすごいです!」
「しばらくは、足を上げないまま素振りをすれば、すぐにいつもの打撃に戻ると思うよ」
「ハイ!」
 どうやら、ホームランへのこだわりはなくなっていたらしい。もっとも、彼女のスタイルは長打を連発する“強打者”ではなく、コツコツとバットに当てていく“巧打者”なのだ。


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