投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 536 『STRIKE!!』 538 『STRIKE!!』の最後へ

『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-258

 ズバァン!

「!」
 桜子のミットを打ち貫く、爽快な音。それは、グラウンドの中でフリー打撃に打ち込むメンバーたちの注意を向けさせるほど、遠く高らかに響き渡った。
(わ……うわぁ……)
 それほどに、威力のあるボールだった。桜子は、しっかりとキャッチングしたにも関わらず、手のひらに重い圧力と痺れを感じた。
 所定の球数である9球は、全て勢いのあるボールだった。ただ、4球ほど高めに浮き上がる暴投に近い球もあった。完璧に近い制球力を持っていた大和には珍しい。
 かたや、大和の投球をじっと見つめていた亮は、ラストに投げたボールが高めに浮き上がって、桜子のミットを威勢良く鳴らした瞬間、満足したように頬を緩ませた。
(これこそが、彼の本当のストレートだ)
 球が浮くのは、鋭くなった腕の振りから生まれるより強いベクトルが、今までのリリースの感覚では抑えきれなかったからであろう。そのあたりは、これからの練習の中で調整していく必要がある。
 それは、彼自身も自覚しているに違いない。
 大和は指先を気にしながら、何度もリリースの位置を確かめている。自分の中で、課題を見つけた様子がよくわかる。
(こんなところかな)
 ひとつの助言から、自分に必要なポイントを的確に抑えて実践することのできる、非常にクレバーな選手だ。これ以上の指導はむしろ、好ましいことではない。
「ナイスピッチングだったよ、草薙君」
「あ、ありがとうございます」
 大和への指導は区切りがついた。
「次は、桜子ちゃんだな」
 今度は、彼のパートナーである桜子の番だ。大和に一言を残してから、亮は桜子のところへ足を運んだ。
 捕手としての技術は、まだまだ荒さは残るものの、充分にこなせている。問題があるとすれば、経験値が少ない故の投手をリードする能力であろう。
「桜子ちゃんは、彼のことをどこまで理解している?」
「えっ?」
 一瞬、亮の言葉が頭の中で上手く廻らなかった。
(何処までって……かなり……かな……)
 想いを通わせ、生まれたままの姿になって、何度も熱い夜を過ごしてきた。 その濃密なコミュニケーションの数が、大和への理解度を表すのなら、これは相当のものだろう。
(いつも優しいんだけど……エッチのときは、最近、激しいかな……胸とか、いっぱい揉んで……おしり、叩いたりするもん……)
 スキンシップの時は、自分を労るように愛撫をしてくれるのだが、接合して盛り上がってくると、臀部へのスパンキングが混ざってくる時がある。もちろんそれは、自分を苛烈に責めるものではなく、程度を抑えたその行為がむしろ、桜子にノスタルジックな心地よさを与えてくれるので、気に入っているのだが…。
(間が空いたりすると……すっごく、エッチになるんだよね……)
 練習試合が近い日にあるときは、大和は全く自分に手を出してこなくなる。その“禁欲期間”は、だいたい5日ぐらいになるのだが、それが明けた直後の大和はとても熱く激しい。
(ちょっとだけ、“S”っぽいところあるのかな……)
「桜子ちゃん?」
(でも、あたしも……責められると、すごくよかったりするし……も、もしかして“M”なのかも……)
「桜子ちゃん!」
「は、はひっ!?」
 亮の言葉を完全に誤解して、妄想の中へ意識を埋没しかけていた桜子。それを遮られて、彼女は頓狂な声を挙げた。
 あまりにも声が高くなったのだろう。二人からは少し離れた場所で、シャドーピッチングを繰り返していた大和が、驚いた様子で視線を向けていた。
「どうしたんだい? 急に、ぼうっとして?」
「ご、ごめんなさい」
 妄想の中身を見られた気がして、桜子は頬が茹であがる。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 536 『STRIKE!!』 538 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前