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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-23

「よっしゃ、まずはひとつ、勝つで!」
「応!」
 龍介の契機づけを受けて、ドラフターズの面々が気合の入った声をあげる。その中には、桜子のものも、大和のものも混じっていた。
「オーダーは、次の通りや」
 龍介が、審判に手渡したのと同じ紙切れをかざして、それぞれ打順と名前と守備位置を読み上げていった。


 1番:新 村(遊撃手)
 2番:管弦楽(投 手)
 3番:蓬 莱(右翼手)
 4番:原 田(捕 手)
 5番:多 島(三塁手)
 6番:山 田(一塁手)
 7番:岡 山(二塁手)
 8番:仁 藤(中堅手)
 9番:佐 橋(左翼手)

 補欠:蓬 莱(龍介)
    田 中
    草 薙


「草薙君は、まだ肘の具合がよくないらしいから、すまんけどベンチにおってもらうで。でも、状況によっちゃ代打を頼むから、そのつもりでおってくれ」
「はい」
 本当は、軽い送球程度なら問題はないほど大和の右肘は回復している。しかし、経験者だからといって、スタメンの中に割り込むようなことはしたくなかったから、自分はベンチにいることが妥当であり、そして当然であるとも考えていた。
 後攻めのドラフターズは、マウンドに京子が立ち、それを中心に皆がそれぞれの守備位置に散っていく。
(いいチームだな……)
 きびきびとしたボール廻しを見て、大和はそう思った。龍介の話では、上位打線に名を連ねる4人以外は、これまで野球の経験がないということだったが、そのグラブ捌きや送球を見るに、確かにおぼつかないところは感じるが、それでも十分に鍛えられている印象を受けた。
(それに、管弦楽さんの投球フォーム……)
 そして、投球練習を行っているマウンド上の京子の姿に瞠目する。
 とても女性とは思えないほど豪快で大きなモーションから、水が流れるように流麗な動きを維持し、鋭くしなって振られる右腕が鮮やかだった。上半身のしなりを、ぎりぎりのところまで留めていられるその下半身には、細身の外観からは想像もつかないほどの安定を見せている。
(凄く、重そうだ)
 そして、そんな投球フォームから放られるストレートは、捕手の原田が構えているミットを貫くときに、重く響くような音を鳴らしていた。
(………)
 甲子園で対戦してきた、名のある好投手と遜色のないその球筋に大和は舌を巻く。世間はとても広いものだと、彼は思い知った。
「へへっ、まあ、ひとつお手柔らかに」
 シャークスのトップバッターが、打席に入った。細身の男ではあるが、その構えは落ち着きがあって、経験者であることを伝えている。
「プレイボール!」
 草野球の試合とはいえ、真剣なものがグラウンドに走った。
 ざ、と京子の足があがり、第一球目を投じる。それは、外角低めを貫くストレート。
「ストライク!」
 審判の手が挙がる。彼女はコントロールも良さそうだ。あの流れるような投球フォームならば、頷ける話である。
「ストライク!!」
 二球目も外角の同じところを攻める。アウトコースというのは様子見には絶好の場所だが、それにしてはかなり慎重なリードだな、と大和は思った。
(相手がそれだけ、強いってことか)
 初回から慎重なリードになっているのは、警戒を強めているからだ。あれだけの球筋を有している京子でさえ、その配球に気を遣わなくてはいけないというのなら、対戦しているこの“シャークス”は、かなりの手練が揃っているのだろう。


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