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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-164

 スパン!

「ストライク!」
 絶妙な位置を貫くストレートである。一点を返し、ヒットで続いたその好機を生かすために、國文館の打線は慎重になっている。
「ストライク!!」
 それならば、と桜子は、早い段階で相手打者を追い込んだ。球威が落ちたとはいえ、大和の制球力は健在だ。外角のストライクゾーンを、ミリ単位で掠めるコースを要求し、難しい球に手を出さないであろう相手打者に、スイングをさせなかった。
「………」
 ボール球と思って見送ったストレートにストライクの宣告を受け、打者には少なからず動揺が見える。
(ここにきて!)
 桜子は、そんな相手の怯みを見逃さなかった。大胆にも、インコースを大和に要求する。球威があれば、相手に窮屈な思いをさせて、満足なスイングをさせないコースではあるのだが、今の大和の球威ではかなり大きなリスクを背負うのは間違いない。インコースというのは、体に近く目で追いやすいということもあって、甘い所に行けば間違いなく長打を喰うゾーンでもあるのだ。
「!」
 だが、桜子の意図を理解した大和は、“打たれるかもしれない”という不安を感じることもなく球を投げた。“迷い”を見せないそのリードに、彼は惹き込まれている。

 パシッ!

「………」
 幾分、軽い音がミットから響く。やはり、大和の球威は目に見えて落ちていた。
 しかし…。
「ストライク!!! バッターアウト!」
 相手がバットを振らないのでは、その球威の衰えも影響を受けない。打者はボールと見極めていたのだろうが、大和の投じたストレートは、間違いなくホームベースの内隅を掠め、審判の腕を高々と天に向けさせていた。
「ナイスだよ!」
 連打を浴びたことで揺らめいた勝負の流れを、見逃しの三振で打ち取ったことよって堰き止めた。
(今度も、ここ!)
 左打席に入った次打者の胸元に、桜子はミットを構える。とことん強気のリードである。

 キィン!

 インコースに来たストレートを、初球から相手は打ち放ってきた。
「!」
 鋭い打球が、またしても一二塁間を襲う。
 必死になって飛びついた雄太のグラブの先に、それは衝突した。
「わっ、うわわっ!」
 打球を追いかけていた吉川が、グラブに弾いたことで向きを変えた打球を追いかける。泡を食ったような声を出してはいたが、テニスによって鍛えられた反射神経のよさと俊敏なフットワークは、はっきりと活きていた。
 雄太のグラブに当たったことによって勢いを失い、ふわりと舞った小フライを、競泳のスタートのように飛び込んで、吉川は見事にグラブの中へ押し込んだ。
「アウト!!」
 見てくれは悪いが、アウトに打ち取った。連打の後、相手方に傾きかけた流れだったが、二死を奪ったことで完全にそれを止めた。
 本塁打と単打が続いたことで俄かに活気づきはしたものの、後続を打ち取られ、走者を溜めることも敵わなかったため、國文館大学には消沈した雰囲気が漂う。
「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 球威が衰えていたはずの大和のストレートに対し、スイングアウトの三振に切られた打者。明らかにその戦意は、喪失されていた。
「チェンジ!」
「よし! よく粘ったな、大和!!」
 初めて危機を迎えた双葉大ではあったが、それを本塁打による最小失点で凌いだ。
「クサナギさん、みごとなドヒョウギワの粘りでございました」
 雄太もエレナも、崩れかけながら何とか持ち直し、この回を投げきった大和を労う。


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