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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-105

 ごんっ!

「OUCH!」
「なんだ!?」
 野球部員全員が部室に揃って新人監督を待つ中で、異様な音が響いた。それを確認しようと、雄太が扉を開く。
「MY GOD……」
 見れば、額を両手で押さえ、悶絶しているブロンドが鮮やかな女性がそこに居た。
(この人が……)
 すぐに雄太は察した。それにしても昨日からこの出っ張りは大人気だ。
「あ、あの……」
「? HI!」
 俯いて悶絶していたブロンドの女性は、俄かに顔をあげると雄太の顔を見て破願した。
「HELLO!」
「は、はろぅ?」
 まずい、英語だ。と雄太は珍しくも狼狽する。救いを求めるように部室の中を振り返ろうとした雄太は、既に皆が足並みを揃えて並んでいるのを見て苦笑した。
(気の早い奴らだな)
 もっとも、新しい監督になるという人を、9人全員で出迎えようと企図したのは雄太である。最上の礼でもって、自分たちの指導者になる人を迎え入れようと考える辺り、さすがに雄太は歴史を良く知っている。必勝の歴史を紐解けば、そこには必ず“礼”がある。
「すごいですね。みなさん、勢ぞろいですか?」
 ぶつけた額を抑えながらブロンドの女性は、整然と並んでいる部員たちを見やると、眩いばかりの微笑を見せてくれた。さすがに教員の立場にあるからフォーマルな装いをしているが、だからといって厳粛な雰囲気は感じさせない。
「こんにちは、みなさん!」
 加えて、流暢な日本語を話す。
『社交的な方です』
 苫渕のいっていた通り、笑顔を絶やさないから、馴染みやすい女性に見えた。“外国の人”という敷居の高さは、すぐに払われるであろう。
「トマブチ先生からカントクの座をあずかった、長見エレナです」
 今度は粛々と、頭を下げた。“和的な美”も、この女性からは強く感じる。
(でかい……)
 そうして顔を起こしたエレナを、皆は見上げている。そんな中、桜子と若狭だけが同視線軸で彼女の顔を正面に捉えていた。
 つまり長見エレナという女性もまた、180センチを超える長身なのだ。例の出っ張りに頭をぶつけたのだから、察しはついたと思うが……。
「野球は、見るのも、やるのも、教えるのもダイスキです。ですので、よろしくお願いしますね♪」
 エレナウィンクが炸裂した。この一撃で、野球部の男どもは彼女に率いられることを完全に享受した。内心狂喜している者も、居るに違いない。
(こ、これはラッキー……)
 雄太もそのひとりである。
「いてっ!」
 品子に尻を抓られていた。彼のエレナに対する視線によからぬものがあると邪推したのだろう。
 冷静だったのは、大和と岡崎である。特に岡崎は、彼女の監督としての器量がいかばかりのものか、その立ち居住まいから既に監察している。試合の中でベンチワークは欠かせないものだから、彼女の指導力には大いに期待もしており、それが期せずして値踏みするような視線になっている岡崎であった。
「チームのカシラは、どなたですか?」
「頭……」
「雄太!」
 品子の叱正で我に帰った雄太は、咳払いをして胸の中の邪気を払うと、
「自分が、キャプテンの屋久杉です」
 と、彼にしては珍しくも慇懃に名乗った。
「あなたがヤクスギさんですか。トマブチ先生から聞いていますよ。今時珍しい、ネッケツカンだと……」
「そ、そいつはどうも……」
 握手を求められたので手を差し出した雄太は、それを握られるやぶんぶんと振り回された。体格に違わず、力持ちである。
 その後、居並ぶ部員たちが名乗りあっていく中で、桜子に番が移った瞬間、エレナの破顔はさらに大きなものになった。


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