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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-106

「サクラ!」
 明らかに、知己に対する響を有している。それだけでなく、エレナは弾かれたように桜子に向かって歩を進めると、その勢いのまま彼女に抱きついていた。
 ざわ…と他の部員が俄かにさざめきあう中で、桜子だけは穏やかな笑みを浮かべたままエレナの抱擁を受け止めている。長身の女性二人が豪快に抱き合う様は、なにやら扇情的でもあるが、そういうなまぐさみを感じさせない微笑ましい絵ではあった。
(やっぱり、エレナさんだ)
 実は、エレナの姿を確認してすぐに、桜子は彼女に飛びつきたい衝動に駆られていた。なぜなら、桜子はエレナを良く知っているからだ。厳密に言えば、義兄の龍介と彼女とが同じチームメイトだった縁からの交流であるのだが、エレナには可愛がってもらっていた。
 結婚してからエレナは、夫の長期海外出張に合わせるように日本を離れていたが、最近戻ってきたらしいということは、やはり蓬莱亭にとっては馴染みの深い“木戸 晶”という女性から聞いていた。だから、いずれ彼女が蓬莱亭にやってくるのを、首を長くして待っていたのだが、それよりも先に思いがけないところで再会を果たしたものである。
「大きくなりましたね。胸も、ボインになりました」
「エ、エレナさん……」
 確かエレナが城央市を離れたのは、桜子が高校に進んだ辺りのことだったから、その時からまだまだ成長を見せている桜子の発育振りを、エレナはその結果で確認したことになる。
「サクラ、とってもいいオンナになりました」
「も、もう……」
 嬉しいが、恥ずかしい。困ったように視線をさまよわせた桜子がすがったのは、なぜか大和であった。視線を向けられた大和は、苦笑でそれに応えた。
 思いがけなくも、再会の場と化したことで穏やかな空気が充満した部室ではあったが、それはすぐに本来の姿に戻る。
 早速とばかりにミーティングに入ったその時、エレナの顔は指導者のそれになっていた。
「1部と同じように、五月に試合は始まるのですね」
 まずは日程の確認からである。品子が用意してきたレジュメを眺めながら、エレナは色々と知識を纏めている。
「2部リーグの仕組みは、よく知らなかったのですが……」
 エレナは“隼リーグ”を熟知している。なにしろ大学時代、1部リーグに所属しているチームで戦っていたからだ。しかし、2部リーグのことは全く知らなかった。その辺りはしっかりとレジュメで説明がなされていたので、エレナは隅々まで目を通して、その把握に努めた。
 2部リーグの大きな相違点は、1部とは参加大学との数が違うことだ。東日本軟式野球推進協議会は、2部リーグへの参加大学には数の制限を設けていないので、隼リーグが盛り上がりを見せるようになると、それに参加しようとする大学は年を追って増えていった。今では、最も新参である双葉大学を含めると、なんと16ものチームが2部リーグにはいる。故に、その大会方式も異なったものにしなければならない。
「前期はブロック戦。後期はトーナメント戦になるのですね」
 全大学の総当りでリーグ戦を組むと、とんでもない日程になってしまう。そこで協議会は、独特の試合方式を考案した。
 16ある大学を、まずは抽選で4ブロックに分割し、4チームによるブロック戦を行って、その中で上位2チームが後期に行われる決勝トーナメントへの出場権を勝ち得るというシステムである。
 ちなみにブロック戦は9回完全決着で、試合経過に関係なく、勝ったチームには勝ち点が3、引き分けの場合は両チームに1点が加えられる。その勝ち点の総合で順位を決め、トーナメントに進出できる上位2チームを選出するのだ。
 トーナメントのことは、説明するに及ばないだろう。勝てば先に進み、負ければその時点で終わりである。故に、トーナメントには延長戦がある。
「まずは、ブロック戦を勝ちあがることが、ワレワレの目標ですね!」
 日程を把握して、エレナは気合を高めたようだ。
「それでは早速、皆さんの力を見せてください!」
 そのまま、双葉大学軟式野球部は、練習場に活動の場を移したのであった。


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